悪いものが、来ませんように
「読み終わった後、もう一度読みたくなる」 というアオリ通りでした。叙述トリックであることを分かったうえで読んでも「騙される快感」があったし、隠された関係性がきちんとテーマに繋がっていました。
【作者】
芦沢央
【あらすじ・概要】
助産院で働く庵原紗英は子供が欲しいと思いながら夫の浮気に悩んでいた。紗英と親しい柏木奈津子も福祉施設でのボランティア仲間に馴染めず、お互いが支えあう関係だった。
ある日、紗英の夫が失踪し他殺死体として発見される。「犯人」はすぐに見つかるが、紗英と奈津子の関係が大きく変化していく。
【感想・考察】
叙述トリックだと分かって読んでいても、きっちり騙された。後から読み返すと、冒頭シーンの時系列や挟み込まれた証言の位置づけが見え、きちんとプロットが練られていることが分かる。
トリックそのものに「騙される」楽しさもあるが、紗英と奈津子の共依存的な関係や、その背後にある社会の呪縛のようなものの怖さも感じる。