Kennie の読書録

毎日1冊本を読み、記録を残したいと思います。

一九八四年

 「戦争は平和なり」

 「自由は隷属なり」

 「無知は力なり」

というスローガンが物語の内容を表現しています。

ディストピア作品としてよく名前を聞くので読んでみましたが、実に面白い。

権力を永続させようとする支配者が、どのように人民をコントロールしていくのか、極めて精緻に考えられていて、読むだけで息苦しくなるような話です。一読の価値があると思います。

 

【作者】

 ジョージ・オーウェル

 

【あらすじ・概要】

 1984年、世界はオセアニア・ユーラシア・イースタシアの三大国に分かれる。主人公のウィンストンはオセアニアの真理省で「間違えていた過去の記録」を修正する仕事をしていた。党の偉大なる指導者である「ビッグブラザー」の発言が現実と異なっていた場合、ビッグブラザーの過去の発言を修正するか、現実に起こったことを修正することで、党の発言は常に間違いのないことになる。

 ウィンストンは「現実」と「記録」の差異に苦しみ、人々の記憶がコントロールされることに反発を覚える。党が24時間体制で監視する「テレスクリーン」の死角に潜み日記をつけ、自分と同じ思いを抱いていると思われるオブライエンと接触したいと願う。

 ウィンストンは同じく党に反感を持つジュリアと恋に落ち、下層民「プロール」の居住区にある「古道具屋」の部屋で逢瀬を重ねる。また党の統治方法について書かれた本を借りてその思想に触れる。しかしある日、党の「思考警察」に確保され、「愛情省」で徹底的な尋問を受ける。

【感想・考察】

 「戦争は平和なり」という言葉の通り、戦争は実際に国家間で覇権を争うものではなく、上層・中層・下層に分かれた社会階層を安定して保つために行われている。あるいは行うフリがされている。余剰生産を防ぎ、生活のレベルを上げさせないことで中層に権力を転覆させる危険をなくし、外部に敵を設定することで求心力を保つ。

 「無知は力なり」の思想を端的に示すのが「ニュースピーク」と呼ばれる言語。曖昧さを廃して「含み」や「ニュアンス」を表現できないようにし、語彙を制限することで思考の範囲を狭める。「良い」の反対は「非良い」で「悪い」という言葉を使わない。「Free」 から「自由」という意味をはぎ取り、「Fat Free」など「~が含まれていない、必要ない」という意味に限定する。

 人々が考える力を制限し、党の思想「イングソック」に合わない観念は無いものとする。

 「自由は隷属なり」という通り、人々は党の思想に全てをゆだねる。ウィンストンは過去を改変されることに自由を奪われる苦痛を感じたが、記録と記憶が書き換えられた時、客観的で絶対的な事実などあり得るのだろうか。

 

 徹底した支配が描かれ、ある意味救いのない世界で、最後には銃殺されることが唯一の救いとなるウィンストンの人生も悲しいが、ウィンストンが「ここから世界が変わる」と感じた下層民であるプロールたちの力強い生活の姿に唯一の救いを感じる。