神津恭介、密室に挑む 神津恭介傑作セレクション
Amazon Prime Reading で無料だったので読んでみました。だいぶ昔の作品ですが、本格的な密室トリックは今読んでも十分楽しい。
【作者】
高木淋光
【あらすじ・概要】
神津恭介が密室殺人を説く、以下の6編
・白雪姫
青森の雪深い屋敷で起こった殺人事件。当主の弟が屋敷の離れで殺されたが、足跡は殺された当人のものしかなく、部屋は内側から施錠されていた。
・月世界の女
「満月の夜に月に帰らなければならない」という子爵の娘。かぐや姫のごとく多くの男から求婚され「月に帰った後に私の姿を見つけてくれた人と結婚する」と言う。満月の夜、言葉通りに彼女は忽然と姿を消す。
・鏡の部屋
かつて手品師が使っていた「鏡の部屋」で、消えてみせるという妻。部屋に入ると姿は見えず、助けを呼ぶ声が聞こえる。周辺を探すが見つからず、部屋に戻ると胸を刺された妻の死体があった。
・黄金の刃
四次元の世界で時空を操ることができるという男から「人を殺した」との電話を受ける。本人は殺したと主張するが、その時男は遠く離れた場所にいて物理的に殺すことはできなかった。
・影なき女
内側から 施錠された密室で高利貸しの男が殺され、一緒にいたはずに黒い服の女性が消える。関係者が続々と殺される連続殺人。黒服の女性は誰なのか。
・妖夫の宿
「読者への挑戦」を挟んで前後編に分かれる本格推理。奔放で妖艶な元女優のホテルオーナーが宿に訪れるが、その前日、彼女をかたどった蝋人形の胸にナイフが刺され宿に送られてくる。物置にあった蝋人形が中庭で発見され、彼女は密室で殺されていた。
【感想・考察】
1950年代~60年代の作品がメインで、社会背景に時代を感じる。戦争が直ぐ近くの生々しい体験として描かれていたり、爵位が未だ意味を持っていたり、ちょっと昔の時代小説感もある。
舞台の古さゆえに機械を使ったトリックでは「ドローンを使えば簡単」とか思ってしまったりするが、「行動主体の入れ替え」とか「順番の入れ替え」など、人間の心理を欺く心理トリックは古さを感じさせない。
最近は、少し重めな「社会派ミステリ」や、キャラクタ重視のラノベ寄りミステリが多いけれど、こういう純粋なミステリもたまには面白い。