鉄塔の下で その他の短編
【作者】
赤井五郎
【あらすじ・概要】
不思議な世界観を持つ3つの短編集。
・鉄塔の下で
子供の頃、誰にも見つからない鉄塔のわきの草むらで空を眺めるのが好きだった。そこでは「リクちゃん」と学校での出来事や山の妖怪の話をしていた。
大人になって、ずっと離れてしまっていた、かつての場所に再訪する。そこでわたしは「リクちゃん」と再び出会う。
・秘密の友達
「妖精が見たい」という友人。「妖精は存在しない。だから見ることはできない」。それでも人は心の中に妖精を見る。
・秋の来る頃
自分には、まもなく壊れてしまうものが分かる特殊能力があったが、特に役に立つこともなく、誰にも秘密にしていた。それでも壊れゆくものに、最後にどうしても見せたいものがあった。
【感想・考察】
この作者の描く世界は、自分が見ている日常の現実とは微妙にずれていて、少し恐ろしくとても美しい。
「秘密の友達」で妖精を見たがる友人が言った言葉、「なんかさあ、俺は昔から違う場所にいるような気がしてたんだ。本来いなければならないところはここじゃない。少なくともこの時代のこの場所じゃないような気がするんだ」というのが、作者の世界の見方なのだろうか。
夢の中で現実との違和感をかすかに意識しているような、不思議なトリップ感がある。