超一流の雑談力
【作者】
安田正
【あらすじ・概要】
ビジネスコミュニケーションの研修、コンサルタントを行う著者が「雑談」の重要性と、スキル向上について語った本。
主なポイントは以下の通り。
・雑談力向上のまとめ
「声をいつもより3音くらい高くする」
「相手が聞きたいと思う話をする」
「相手が言いたいことを理解してから話す」
「あいづちやうなずきのバリエーションを増やす」
「質問で上手に会話を広げる」
・自己開示で親近感を持ってもらう
軽い失敗談などで自己開示をする。深刻な問題などは避け、1分以内に収める。
・オチを意識する
「相手の状況を知りたい」、「相手のプライベートを知りたい」など、雑談で何を伝え何を引き出したいのか、オチを意識して展開する。
・低い声は感じが悪い
三音高い音で話すと明るいイメージを与えられる。特に電話で低い声はよくない。
・無難な話題から入り、掘るべき場所を探る
最初は無難な会話から入り、相手が乗ってきたところで深く掘り下げる。導入の話題としては、気候、相手の会社の状況、衣服、健康、趣味、最近のニュース、共通のこと、出身地などが良く、政治や宗教などには触れるべきではない。恋愛や下ネタは使い所がよければ効果的だが、ビジネスシーンでは難しい。
・「Funny」ではなく「Interesting」
Funnyな笑い話は空気を盛り上げるが、実は高い技術が要求される。相手にとって役に立つ情報を提供する方が興味を持たれる。自分の仕事に関わる話、健康についての話、面白かった本や映画などから入り、相手にとって実益のある情報を出していけると効果的。
・あいづちのバリエーションを持つ
興味を持って聞く態度が大事。
・オウム返しで話を広げる
相手の言葉を受け止め、相手が返しやすそうな方向に広げる。
「マラソン大会に出たんですよ」→「マラソン大会ですか」ではなく、
「マラソン大会に出たんですよ」→「マラソン大会!フルマラソンですか?」のように。
・相手のこだわりポイントを引き出す
相手の発言に対し、「何か特別なことをしているのですか?」と返すことで、相手がこだわっているポイントに話を展開することができる。
「私はあまり風邪は引きませんね」→「何か特別なことをしているのですか?」→「実は食事に気をつけていて、・・・・」のような流れ。相手がこだわっているポイントは話が広がりやすい。
・「なぜですか?」は愚問
理由を問う質問には圧迫感がある。相手の知識レベルを見極め、詳しそうな分野であれば質問を投げかけるのはアリだが、相手の負担にならない会話の展開を心がける。
・「知ったかぶり」は印象が悪い
「知ったかぶり」はすぐにバレるしテキトーな印象を与えてしまう。自分はこう理解したが正しいか?というような質問は誠実な印象を与える。
・ちょっと話を盛って面白くする
嘘をつくのはよくないが、実際にあった話を大げさに表現するのは、面白くする手段として有効。
・意見が違う時は受け流す
雑談で正しい結論のため相手を論破する必要はない。「そういう考えもあるとは気づかず、うかつでした」と深追いせずに話題をずらしてしまった方がいい。
・前に教えてもらったことを話題にする
「前に教えてもらった何々は良かった」などと伝えることで、相手に興味があることを示せる。
・安価な手土産を
効果な手土産はプレッシャーを与えてしまう。さりげなく手間をかけたものは良い土産となる。
・雑談から本題への流れを自然に
いきなり「ところで本日は・・・」のようなぶった切り方をしない。雑談から思いついたテイで本題に入る。
・大事な話の前には少しタメを作る
0.5秒程度のタメで相手の注意を引きつける。
【感想・考察】
「雑談」のスキルは大事だと思う。話しかけるだけでも「あなたに敵意を持って射ません」というメッセージになる。オランダで生活しているとエレベータに乗り合わせた初対面の人でも、ほぼ必ず何か話しかけてくる。「親しくなりたい」というよりは「敵意はない」という表現なのだろう。黙っていると「何を考えているかわからず怖い」そうだ。
またビジネスの場で雑談の上手い人は、初対面の相手や数回あっただけの人に対しても、旧知の友人のような雰囲気を作り上げてしまう。これは単なるスキルだけなく、その人の人間性や経験などが影響していると思うが、相手が乗りそうな話題を選んだり、触れられたくない部分を避けたりするのは、意識的に磨いたスキルだと思う。
「相手に関心を持ち、相手を気分よくしよう」という態度で、雑談の経験を積んでいくことが必要なのだろう。