ココロ・ファインダ
【作者】
相沢沙呼
【あらすじ・概要】
写真部員の女子高生、ミラ、秋穂、カオリ、シズ4人のそれぞれの視点から語る4編の短編小説集。
・コンプレックス・フィルタ
ミラが語り手。
ミラはカオリと親しくしているが、自分の容姿に自信が持てず、可愛らしく誰からも好かれるカオリに嫉妬していた。ある日を境に写真部の部室に姿を現さなくなったカオリ。撮られた写真に「写っていない」ものがあったことで、撮影者のシズと仲たがいをしたらしいが、何が写っていなかったのか。
フィルタを通してみた世界は真実ではないのか。
・ピンホール・キャッチ
秋穂が語り手。
自分は地味な存在だと感じている秋穂。社交的な父から「笑顔が大事!」と言われる度に嫌悪感が募っていた。ある日ミラノ写真を整理していると、撮影した覚えのない写真のフォルダが見つかる。学校校舎の壁だけを淡々と撮影した写真はだれが何の目的で取ったものなのか。
ピンホールカメラは僅かな光を時間をかけゆっくり受け止める。
・ツインレンズ・パララックス
カオリが語り手。
明るく可愛らしいカオリはクラスでも部活でも輝いている。同学年の男子から告白されるが引っ叩いて拒絶する。クラスで浮いている女生徒を見て、中学の時に仲間外れにされていた同級生に声をかけられなかったことを思い出し、シズに当時の話をする。
鏡は左右を反転しているのに上下を反転させないのは何故?
・ペンタプリズム・コントラスト
シズが語り手。
シズは成績優秀で両親からも期待されていたが、写真撮影を極めたいという情熱を持っていた。文化祭が終わり展示していた作品を片付けているとき、カオリを写した一枚だけが、特に日に当てたわけでもないのに退色していることに気づいた。誰かがオリジナルをインクジェット印刷のコピーに置き換えたようだが、誰が何の目的でやったのだろうか。
一眼レフのプリズムは光を何度も折り曲げ、撮影者のファインダに像を結ぶ。
【感想・考察】
相沢沙呼氏は写真に興味があるようだ。マツリカシリーズでも写真部が舞台となっている。刻一刻と変わっていく世界の一瞬を切り取ることは、文章が常に遷ろう心を定着させることとも似ている。学生時代は自意識が高いゆえに人間関係への意識が繊細で、傷つきやすいのだろうと思う。エゴとエゴをぶつけ合うことが、お互いを支えあうことになっている光景は美しいと思う。