あなたがさっき食べたのは、ボクのお母さんです
【作者】
地球まるい
【あらすじ・概要】
6編の不思議な話を集めた本。
・願いをかなえる悪魔
悪魔が封印された壺を男が明けてしまう。
悪魔は封印を解かれた謝礼を男に申し出るが、「世界が良くなる方向の願いを叶えてはいけない」という縛りがある。男が何を願えば世界は悪くなるのか。
・あなたがさっき食べたのは、ボクのお母さんです
食育を謳うレストランでは、食材となった動物の写真を食べた後に見せて説明をする。豚肉を食べた少年は「あなたがさっき食べたのは、ボクのお母さんです」と書かれた子豚の写真を見せられる。少年はこの子豚に会いたいと願う。
・有機3Dプリンタ
有機物を合成できる3Dプリンタが発売された。男は探偵を雇いアイドルの詳細情報を集めまくる。有機3Dプリンタで命を作り出すことは認められていないが、男は執念を燃やし情報と素材を集める。
・開かずの扉
都市伝説を調査する雑誌記者の相沢は部下と一緒に「開かずの扉」があるという洋館を訪れる。血塗られた扉の奥に入って出てきたものはいないという。窮地に追い詰められた相沢はどうやって危機を脱するのか。取材をアレンジした夜野編集長は何を知っているのか。
・骨折アルバイト
前の話に続いて「都市伝説」を追う相沢が語り手。今度は、謝礼を払って骨を折って折れるときの状況を確認するという「骨折治験」の噂を追う。夜野編集長を通して取材の許可は取れたが、所在を隠すため目隠しされ動きを封じられたうえで車で治験現場まで連れていかれる。
・脳内ちゃんねる
2ちゃんねる や ニコニコ動画のようなネット文化に親しんでいた青年が高層ビルの倒壊を目撃する。それ以降、視界にニコニコのコメントのような文字が流れて見えるようになる。統合失調の症状だと思い心療内科に赴くが、どう考えても自分が知るはずのない情報がコメントとして流れてきていることに気づく。
【感想・考察】
最後の「脳内ちゃんねる」が特に面白い。2ちゃんやニコニコにありそうな掛け合いでコミカルな雰囲気を出しているが、展開は意外とシリアスでミステリの要素もあり、最後まで引き込まれた。「あなたがさっき食べたのは、ボクのお母さんです」というタイトルが重くて手を出しかねていたが、軽く楽しめる本だった。