団地のナナコさん
【作者】
ヤマダマコト
【あらすじ・概要】
夏休み前に新潟の地方都市 新津市 に引っ越してきた主人公の少年 拓海。
学校で友達ができる前に夏休みになってしまうが、団地でであった年上の少女 七恵と友達になり、虫取りをしたり図書館に行ったりして充実した夏休みを過ごす。
ある日、七恵は「猫に生まれ変わりたい」と、拓海は「学校の友達が欲しい」と願い、お互いの願いをかなえるために相手に呪文をかける。
数日後の登校日、拓海は友人を得たがその後七恵と会うことはなかった。
十数年後拓海は新津に戻り、小学生の時に埋めた「タイムカプセル」を掘り返し、あの夏に起きたことの真実を知る。
【感想・考察】
1980年代の地方都市の雰囲気は何故か懐かしく感じる。
まだ大手資本やチェーン店が行き渡っておらず、個人経営の店が活気をもっていたり、大人になってみると「こんな狭いところだったのか!」と驚くような場所で、大冒険をした気分になっていたり。
「小学生の夏休み」というのは鉄板でノスタルジーを掻き立てる題材だなと感じた。
この作者は「天下」シリーズで初めて知ったので、アクション・ミステリを軸にした ジュブナイル小説がメインだと思っていたが、
幽霊や死後の世界が出てきてもそこは恐怖の対象ではなく、むしろ現世の人間関係に怖さや醜さを見出している。
だからといって厭世的になるのではなく、醜さや不条理が溢れる世の中で、強く生きていこうとする人々への賛歌となっている。