捨てる快楽 脳内麻薬ダダ漏れで、捨てまくっちゃった私の生活
【作者】
須藤林太郎
【あらすじ・概要】
片付けることができず「汚部屋」で暮らしていた著者。「ぐうたらでいいじゃない」という本に出会い、片づけない自分を肯定し更に片付けから遠ざかっていた。
会社の自席など他人の目に触れる部分はきれいに片付けるが、自分の家は散らかり放題というアンバランスさで、うつ状態になってしまう。
「もうどうでもいい」と諦めたときから、何故か「片付けてみよう」という思いが生まれ、今度は不要なものを捨て徐々に部屋が片付いていくことに快感を覚え始める。「程よいバランス」を取ることができず、徹底して捨て、物欲も減退していった。
部屋を訪れた友人に「いくらなんでもものが無さすぎる、味気ない」と指摘され「捨てること」に捕われすぎた自分に気づく。
最後は「必要なのはバランス感覚」という結論に落ち着く。
【感想・考察】
断捨離のやり方やミニマリストの生活を説明するのではなく、モノを捨てることに取り憑かれた著者の心情の変化を物語る本。
私も、上手くいっていたものが少し停滞し始めると「問題を直視したくない」気持ちから放置して、結果としてガタガタになるという経験は多々ある。この著者には潔癖症の傾向がある分、少し散らかると「もう触りたくない」という気分になることは十分理解できる。
「人は完璧にはなれない」ことを受け入れ、「周囲は大して自分を見ていない」ことに気づき、適当さの許容範囲を広げていくことも「成熟」の一要素なのだろう。