Kennie の読書録

毎日本を読んで、面白い本を紹介したいと思います。

「横浜」をつくった男~易聖・高島嘉右衛門の生涯~

【作者】

 高木彬光

 

【あらすじ・概要】

 明治初期に「易聖」として政財界に強い影響力を持ち「横浜」の発展に寄与した 高島嘉右衛門 の伝記的小説。

 江戸末期の材木商人だった父の跡を継ぎ、江戸大火の後の材木価格高騰などを機を得て財を築いた。開国後に欧米人相手の商売を始めたが、金と銀の交換比率の違いに目をつけ利鞘を稼いでいたことが発覚し、今日でいう外為法違反で5年間投獄される。

 出獄後は横浜で商売を再開した。材木商としての経験を活かし、欧米人の政府施設や住居などの建設を請負って再び財を成した。欧米人や政府高官を対象とした高級旅館「高島屋」を建設し、そこで政界中枢とのパイプも作っていった。

 政府との関係を背景に「ガス事業」や「鉄道敷設のための埋め立て」、「学校の建設」など横浜発展の基礎を築き上げた。

 また50前には隠棲し、事業の第一線から退いたが、伊藤博文など政府高官との関係は引き続き強く、嘉右衛門の易断が日清日露戦争などにも影響をあたえてたと思われる記録も残っている。

 

【感想・考察】

 明治初期に幅広い事業を手掛け横浜の発展に寄与しているが、名前はあまり知られていない。「高島町」などの地名に一部残っているだけだ。その後財閥を築いた三井、住友などと比べ、起業は得意でも継続し育てることは不得手だったのだろうか。

 司馬遼太郎の作品などで強調されているように、明治初期の政財界には「国のため、私心なく」活動する志士が数多くいたようだ。この本でも作者は高島嘉右衛門をそういう人間として描こうとしているが、どうしても「胡散臭さ」が滲み出るところがあるのは何故だろうか。

 

 明治初期について書かれたものや、その時代の著作などを見ると、当時は「国のために私心なく」というのが高い人格の条件とされていたことが分かる。「藩」単位から「日本」という大きな枠組みへの動きがあり「外国」という具体的な目標・脅威が迫っていた時代には「国家というフィクション」が、今よりもずっと鮮烈だったのだろう。

 最近では「国」という枠組みに新鮮さはないし「外国」も経済や文化など様々な面で、均質化が急速に進み「外部にある異質な脅威」という感じ方は、明治当時と比べてずっと薄くなっている。現代であれば例えば「家族のため」というフィクションの方がずっと生々しいリアリティを持っているような気がする。

 明治の雰囲気に浸かりながら、何だか微妙な胡散臭さを持つ高島嘉右衛門の話を読んで、そんなことを感じた。

 

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