世界一やさしい「思考法」の本 「考える2人」の物語
【作者】
長沢朋哉
【あらすじ・概要】
製菓会社でマーケティング部門に異動になった入社4年目の倉田京子と先輩の青木優人が、「疲労回復」に効果のあるチョコレートのプロモーション計画を任される。感性が豊かだが論理的に考えるのは得意でない京子と、知識はあるが頭でっかちになりがちな青木のコンビで役員へのプレゼンの準備を進めていく。
上層部の派閥争いに巻き込まれながらも、「疲れている人を幸せにするチョコレート」という販売戦略をを作り上げ共感を得ていく。
上記のストーリーに乗せて、代表的なマーケティング理論やクリティカルシンキングなど、ビジネス基本知識を解説していく。説明されているのは以下のような項目。
・クリティカルシンキング「決めることは何か?」
まずは何について考え、どういう結論を出す必要があるのかを明確にする。クリティカルなイシューを列挙し、イシュー・ツリーとして整理することを提案している。MECE(もれなくダブりなく)の考え方や、4P(Product、Price、Place、Promotion)のようなフレームワークについても簡単に触れている。
・戦略思考「目的は何か?そのための手段は何か?」
ごく単純に「戦略=目的+手段」と定義している。上位目的・戦略目的・手段の三層で考えることを推奨している。「戦略的である」ということは「目的が明確で、手段が目的に向かっている」ことだとする。
・論理思考「結論は何か?その理由は何か?」
「論理的である」ということは「主張が明快で、その理由と話の道筋が分かりやすいこと」だとしている。「要するに結論は何か?」「その理由は何か?」の二つがロジカルシンキングの肝だという。
・分析思考「分けて比べ、意味を見出す」
過去と現在、自分と相手などを分けて比べ、その差異や変化から意味を見出すのが分析だとしている。
・直観思考「経験がひらめきを生む」
いわゆるラテラルシンキングの話だが、ひらめきは無から生まれるのではなく、日常の経験や知識の積み重ねが必要だとする。
・仮説思考「ほどほどの分析から、まずは仮の結論を考える」
「良い仮説」は「目的に対する手段として説明できる」、「もっともらしい根拠がある」、「検証可能」ということが条件だとする。データの分析にこだわるあまりに「分析麻痺」に陥るよりも、まずは仮の結論を出して検証するプロセスをとることが「仮説思考」だとしている。
・「考え」を伝えるコミュニケーション「結論+論拠」で伝える
通常は「伝えること」、「理解してもらうこと」が目的ではなく、そこから相手が「意思決定」し「行動を起こす」ことが目的。結論とその理由、バックアップするデータなどを整理して提示することが必要。また説得に当たっては「情動的説得」も有効だとする。
【感想・考察】
マーケティング理論の説明としては入門レベルであっさりとした説明だが、ストーリーに乗せて語られると、具体的で分かりやすいし記憶にも残りやすい。「もしドラ」などでもあった形式だが、抽象的になりがちな理論を分かりやすく印象的に説くには優れた方法だと改めて感じた。
例えば「分析しろ」と指示を受けたとき、「データを時系列や規模や種類など様々なパラメータで分け、その違いや変化から意味を見出して仮説を立てる」ということは普通にやっているが、これを「分けて比べ意味を見出す」という単純な言葉で定義するセンスは素晴らしいと思う。
基礎的なことだが、高いレベルで言語化されているのは素晴らしいと感じた。