地獄の沙汰もビットコイン次第: 仮想通貨の闇を追う
【作者】
ジェイク・エーデルスタイン、 ナタリー・響子・ストゥッキー
【あらすじ・概要】
マウントゴックスでのビットコイン流出事件を中心としたルポ。
マウントゴックスの実質的な創業者であるマルク・カルプレスはビットコインを摂取された被害者なのか、 裏で何か操作をしたのか本書は結論付けてはいない。
いずれにせよ、カルプレス氏が金融機関として必要な会計上の確認を行っていなかったことは有責だとする。日本政府も当時は仮想通貨取引所を金融機関と位置付けておらず、認可なしで設立でさせていたことに問題があると指摘している。
また本書はカルプレスの拘置に関して日本司法制度の問題点にも言及している。 日本の検察は起訴した刑事事件が無罪判決となるのを嫌うので、起訴するからには確実に有罪にし、有罪となるか確定しない案件は起訴しない。実際に刑事事件での有罪率は99%を超えているという。
別件逮捕による本丸の追及や、23日に及ぶ長期の拘置期間、弁護士接見の制限など冤罪の温床になっているとし、特にサイバー犯罪では警察の経験値も低く、パソコン遠隔操作で誤認逮捕が発生している。(これも真犯人のマスコミへリークがなければ、冤罪のまま闇に葬られていたかもしれない)
【感想・考察】
日本ではコインチェックのアルトコイン流出事件も含め、仮想通貨取扱所のセキュリティーレベルが低い。
使いやすさとセキュリティーはトレードオフで、日本の銀行のようにパスワードの連続で使いにくいのは困るが、セキュリティーの甘さも問題だ。 ブロックチェーンの信頼性は高いとしても、取引所などで人的な隙があれば通貨として扱うには危険が大きすぎる。
長期的には国家が信頼性を担保する通貨から、国境を越えた通貨への移行が進んで欲しいと思っている。 投機対象としてではなく決済手段として普及すれば、本質的な意味での世界経済統合が進むだろう。
国家というフィクションよりも、技術というフィクションに現実味を感じる人が増えていけば、通貨を担保するものが国家からブロックチェーンなどの技術的信頼性に移っていくことも十分あり得ると思う。