マツリカ・マトリョシカ
【作者】
相沢沙呼
【あらすじ・概要】
マツリカシリーズの第3弾。連作短編集だった前作(マツリカ・マジョリカ、マツリカ・マハリタ)とは異なり、長編になっている。
女子テニス部室の天井にある人の顔にシミの写真撮影をマツリカに命じられた柴山。美術部の春日麻衣子に声をかけられ、一緒に深夜の女子テニス部室に侵入する。
翌日、「開かずの間」と呼ばれる密室状態であった美術準備室で、トルソーに制服が着せられ辺りに蝶の標本がばらまかれていたのが発見される。トルソーに着せられていた制服が女子テニス部の七里観月のものであり、テニス部室に柴山の携帯ストラップが落ちていたことから、柴山にも疑いがかかってしまう。
その事件は二年前に春日の先輩である秋山風花が起こした「狂言傷害事件」を模したものだと思われた。
今回の事件と二年前の事件にはどのようなつながりがあるのか。密室はどのように作られたのか?
【感想・考察】
「聞けなかった言葉」を追いかける物語だった。柴山に何もいわずに死んでしまった姉、いつのまにかマツリカの元を離れて行ってしまった人たち、姉のように慕っていた先輩が秘密を胸にしまったまま去ってしまった春日。
姉の死により時間が止まり、人と交わる術を失った柴山だったが、「自分を助けてくれる人がいる」という事実を正面から受け止め「自分でも人のためにできることがある」と感じることで徐々に止まっていた時間が動き出す。
「聞けなかった言葉」を探すため足掻こうとする春日の姿が柴山を動かし、柴山の行動がマツリカに「聞けなかった言葉」を届ける。
「廃墟に住む魔女のような安楽椅子探偵と冴えない男子高校生」というラノベ的な舞台設定から始まったが「青年が心に負った傷と、そこからの回復の物語」に仕上がってきている。実に面白い。
あとこの作者は太ももフェチで、プリーツスカート研究家だ。