Kennie の読書録

毎日本を読んで、面白い本を紹介したいと思います。

日の名残り

【作者】

 カズオ・イシグロ

 

【あらすじ・概要】

 ダーリントン・ホールの執事として働く スティーブンス。 前の主人であったダーリントンが亡くなり、アメリカの実業家ファラディが新しい主人となる。スティーブンスは「アメリカンジョーク」を期待通りに返せないことに悩むような生真面目な執事だった。休暇をもらってイギリス内を自動車旅行し、華やかだった日々の回想や、品格とは何かについて思いを綴る。

 ダーリンとは、第一次世界大戦のあとにヴェルサイユ条約で重い賠償責任を負ったドイツの立場を「紳士的」な視点から救おうと動き、主要国への根回しを行う。スティーブンスは「歴史を動かす」ことに関われることに誇りを感じる。そのしばらく前にスティーブンスの父が倒れ、会議の最中に息を引き取るが、執事としての矜持で会議の成功に尽くす。

 今回の旅行では、かつて一緒に働いていた女中頭のミス・サントンと再開することも目的の一つだった。彼女は10年以上ダーリントンホールで働いた優秀な女中だったが、結婚して離れてしまった。復職の意思があるかを確かめるため彼女の住む街を目的地とする。彼女はスティーブンスの生真面目さを理解し頻繁にぶつかりながらも屋敷の運営にともに取り組んできた戦友でもあった。

 

 

【感想・考察】

 現代の日本人視点では「 執事」というのは「魔法使い」と同じようなファンタジーの住人という感じだが、英国ではまだ伝統を残しているのだろうか。社会の「クラス」を意識し、衆愚に陥る悪平等よりは「人徳」と「品格」のある「名士」が世界を動かすべき、という感覚はまだ残っているのかもしれない。

 主人公のスティーブンスは、ジョークがうまく言えないで悩んだり、歴史上の有名人と自分自身が対談したように話を盛ったり、やけに可愛く愛すべきキャラだが「品格」とは何か「忠義とは何か」について真剣に向かう様には心を動かされる。

  徳の高い「名士」が世界を動かしていく英国の伝統、まだまだ動けるけれど老境に入ったことも自覚しなければならない自分自身の姿、会えば当時の気持ちにすぐ戻れるがやはり決定的に離れてしまったサントンとの関係など、夕日が落ち行く前のような「名残の時」が寂しく温かい筆致で描かれている。

 

 

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