毎日一冊! Kennie の読書日記

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バビロン3 ―終―

【作者】

 野崎まど

 

【あらすじ・概要】

 バビロンシリーズの3作目。サブタイトルに「終」とあるが、シリーズ最終作ではない。今作では東京地検特捜部の正崎が主人公だった前作から舞台を変え、アメリカ大統領の視点から描く。

 日本の「新域」で成立した「自殺法」が波及し、アメリカ、ドイツ、フランス、カナダ、イギリス、イタリアといった G7参加国の都市でも自殺を認める宣言や立法が行われる。FBI捜査官としてアメリカで捜査協力をする正崎の警告を受け、人を操り自殺へ誘導する女「曲世愛」への捜査も動き始める。

 各国首脳が集まるG7サミットでも「自殺法」についての討議が始まるが、「自殺を認めるか否か」という検討から「善とは、悪とは何なのか」の探求へと移っていく。

 日本の「新域」ではサミットの開催にぶつけ「自殺法導入都市」の主導者を集めたコミッティーを開きサミットを牽制する。

 自殺は「悪いこと」なのか、「悪いこと」とは何なのか。

 

【感想・考察】

 このシリーズは徐々に後味の悪さを加速させていく。丁寧な描写で「いい人だな」と思わせてから死亡フラグを立てまくるので、読んでいて気分が重くなってしまう。

 とはいえ、前作までの「自殺の可否」から一歩進んで「善悪」の判断について、大統領の立場で見解を示している。シリーズ1作目にも正崎の「正義とは正義を問い続けることだ」という言葉があったが、「続いている」ことが「善い」ことなのだとしてる。

「公平」「功利」「自由」「生得的な道徳観」など、よく語られる正義の根拠と比べると「続いている」という定義は散文的で、すっきりと腹に落ちない部分もある。

 後味の悪い作品ではあるが、作者の善悪感のさらなる追及に興味があり、次回作を期待してしまっている。

 

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