Kennie の読書録

毎日1冊本を読み、記録を残したいと思います。

シリーズ・企業トップが学ぶリベラルアーツ 宗教国家アメリカのふしぎな論理

 

【作者】

  森本あんり

 

【あらすじ・概要】

 「土着化したキリスト教」という観点から、アメリカの歴史を分析する。

 キリスト教も初期には「神が一方的に人に与える」片務的な教義であったが、「神を信じ従うものは救われる」という双務的な「契約」に変化してきた。更には人が現世で「成功し富を蓄積すること」は神からの祝福であり「正しい生き方をしていることの証左である」と捉えている。「プロテスタンティズムと資本主義の精神」でも語られているが、勤勉に働き富を蓄積することが神を讃えることに繋がると考えられている。

 アメリカは成立した時点から政教分離していて純度が高かった上に、宗教が政治から独立している分税金などで賄われることもなく、宗教自体がビジネス的なプラグマティズムを内包することとなった。

 「努力して成功するのは善なること」という信念が、自助努力の考えにつながり、「国民皆保険」や「銃規制」など国家によるお節介を嫌い、「経済的成功による格差拡大」を容認する風土となった。トランプ大統領は極端ではあるが、そういったアメリカの本音の部分に根ざし受け入れられた部分があるとしている。

 また、アメリカは建国当初から権威に対する異端として成立していて、知識階級が固定的に要職を占め富を独占するような「知性主義」に反対する風土もあった。インテリよりは人間としての機微に溢れる人物が好まれている。日本などでは政権の交代があっても実際の行政機能を司る官僚組織は政権とは別の仕組みで動き続けるが、アメリカでは官僚も大きく入れ替わる。知識レベルが落ちることによる損失よりも、固定的になることの弊害を嫌っている。

 

 またアメリカではポピュリズムが力をましている。ポピュリズムに陥らず「民主主義」をすすめるためには「民主」「自由」「進歩」のバランスが大事。「民主」だけが強くなると数の理論で少数民族の排斥や人種主義などが横行するし、「自由」が肥大すると際限なく格差が拡大していく。「進歩」を追求すると武力行使してでも「未開」の地域に進歩を促すようになる。 

 

【感想・考察】

 アメリカの政治を読み解くためには、やろうと思えば何でもできるという「意志力の賛美」があるということがよく理解できた。アメリカの「本音」の部分と、良識ある知識人とは乖離があり、トランプのような極端な人物が大統領となったのも、実は意外なことではなかったのかもしれない。トランプ大統領の極端な政策からは、いつか揺り戻しがあると考えていたが、これがアメリカの本音に根ざす動きなのであれば、長期固定化する可能性もあると見る必要があるのかもしれない。

 簡易な説明でアメリカの歴史の勘所が掴める良書だった。