スウェーデン館の謎
【作者】
有栖川有栖
【あらすじ・概要】
雪が深く積もる冬の裏磐梯のペンションに取材旅行に来たミステリ作家の有栖川。
児童文学作家リョウとその妻ヴェロニカが住む「スウェーデン館」を訪れる。夫妻は数年前に当時7歳だった息子のルネを亡くし悲嘆に暮れていた。
有栖川が訪れた日、ルネを亡くした当日にいた面々がスウェーデン館に集い、和やかな会話が交わされていた。だがその日の夜、離れで殺人事件が起こる。夜中前に止んだ雪のため、本館と離れの間には「被害者が離れに行った足跡」と「第一発見者が発見時に往復した足跡」しか残されていなかった。
有栖川の要請でスウェーデン館に合流した犯罪学者の火村は「足跡トリック」の謎に挑戦する。
【感想・考察】
テンポ良く読みやすい作品。
「罪刑法定主義は犯罪の価格表のように捉えられることもある。最大で死刑というコストを払えば殺人しても良いという見方だ」という視点は面白いと思う。そう考えると、特に経済犯などでは、犯罪が露見する期待値を掛け合わせれば、十分に「割りに合う」犯罪というのもあり得るのだろう。
語り手の有栖川が情に流され苦しむ中、探偵役の火村は冷徹に犯罪を追いつめるが、また別の苦しみを抱えているように見える。