雷鳴館の殺人
【作者】
八槻翔
【あらすじ・概要】
古い洋館「来明館」売却の内覧会に脅迫状が届いた。ミステリ作家の友人から依頼を受けた名探偵「志場みなみ」は元刑事の木場を助手として連れ洋館に赴く。
雷鳴が轟く嵐となり外界と完全に遮断された深夜、木場の頭部だけが残されるという凄惨な第一の事件が起こり、連続殺人の幕が開ける。警察が来れない夜間に第二の殺人が起こり、翌朝に警察がたどり着き安心したところで第三の殺人も発生してしまう。
全ての判断材料が揃ったところで、Who Done It、How Done It の「読者への挑戦」が設けらる。
【感想・考察】
人間ドラマや社会的なメッセージなどを排し、純粋な「パズル」として謎解きに特化したストーリーだった。長さも適度で「読者への挑戦」を見てから、読み返して伏線を探そうという気になるし、仕掛けに気づくいたときの気持ち良さがある。ベテラン作家による重厚なミステリも面白いが、こういう作品も大好きだ。
メインのトリックは割とすぐに読めたが、伏線の隠し方やルール違反にならないミスリードの組み込み方等、ミステリの作法をきっちり守った作品で安心して対峙できる。
前作はRPGの職業別の制約を使ったミステリで視点は斬新だったが、これも正統派のミステリとして成り立っていた。
天空城殺人事件:〜もしRPGの世界で殺人事件が起こったら。〜 - Kennie の読書録
電子書籍で本を出すコストが下がり、様々な挑戦で従来なかったような作品が読めるのは嬉しい。こういう作家がもっと発掘されるべきだと思う。