ジヴェルニーの食卓
【作者】
原田マハ
【あらすじ・概要】
マティス、ドガ、セザンヌ、モネといった印象派を中心とした画家たちについて、彼らと触れ合った人たちの目線で綴った4つの短編。事実を下敷きにしたフィクション。
・美しい墓
アンリ・マティスの話。
一時期、マティスの女中として仕えたマリアがインタビューに応える形で、彼の創作への熱意と類稀なる才能を語る。マティスはピカソとも親交が深く、お互いに深い敬意を抱いていた。最晩年の作品であるヴァンスの礼拝堂は、彼自身の墓のつもりで光溢れる設計を施したのだろうとマリアは語っている。
ヴァンス礼拝堂
・エトワール
エドガー・ドガとメアリー・カサットの話。
当時の官立サロンによる品評制度からはみ出したドガとメアリー。ドガは一瞬の動きを封じ込めるため年端もいかない踊り子を冷徹に観察し立体像を作るなど、偏執的なまでのこだわりを見せることにメアリーは嫌悪感を持ち、当時のバレリーナは金持ちの愛人候補であったことを聞き義憤を覚える。メアリーはドガのモデルとなった少女と話したが、ドガはモデルとなった彼女に絵によって名が売れることを望んでいると伝え、興行主には彼女におかしなパトロンがつかない様依頼していたことを知る。ドガはメアリーに「自分たち画家もパトロンを探し媚びなければならないという意味では彼女と同じ。彼女には運命に打ち勝ってエトワール(星)になって欲しい」と語る。
14歳のダンサー
・タンギー爺さん
ポール・セザンヌの話。
若い画家たちに画材を提供する画材屋で、作品を展示する画廊でもあった「タンギー親父」の娘がセザンヌに送った手紙で構成される話。放浪しているセザンヌに絵の具代を請求する手紙から始まり、タンギーが「売れない若手画家」(セザンヌ、ゴーギャン、ベルナール、ゴッホたち!)に惚れ込み、採算度外視で画材具店を運営している様子が語られる。タンギーが亡くなった時も手元に残った絵は大した値段で売れなかったが、彼の支えた画家たちは後に大きく羽ばたいていった。
タンギー爺さん
・ジヴェルニーの食卓
クロード・モネの話。
モネの再婚相手アリスの娘であるブランシュがモネとの生涯を回想する。アリスとブランシュはモネのパトロンであった父に捨てられ、モネたちとの暮らしを始める。偉大な芸術家と過ごす日々はブランシュにとってこの上ない喜びであった。ある日実父から戻ってくるように命じられ、売れ始めたモネの名声を傷つけることを恐れたアリスとブランシュたちはモネから離れようとするが、モネもブランシュたちと暮らすことがかけがえのない幸せだと言い、ジヴェルニーの邸宅で一緒に食卓を囲み暮らし続けた。
モネは最晩年に白内障を患い、手術をするも創作意欲を失っていたが、ブランシュは最後まで支えとなり続ける。
睡蓮
【感想・考察】
絵画には詳しくないが、この作品を読んでいくと画家やその絵に興味をそそられる。原田マハは丁寧で優しい文章で人の感情を動かすが、絵画については特に強い熱量を感じる。身近にある美術館に足を運んでみよう。