風少女
【作者】
樋口有介
【あらすじ・概要】
父の葬儀で前橋の実家に帰った大学生の斎木亮。帰り路で中学時代に片思いをしてい川村麗子の妹、川村千里と会い、麗子が死んでいたことを聞く。
麗子の死は「睡眠薬を飲んで風呂場で転倒し湯船にはまって溺死した」事故死であると結論付けられていたが、千里は納得できず、亮も違和感を感じていた。
中学時代の知り合いが集まるスナック「青猫」で話を聞き、千里と一緒に事件を追う亮。
東大受験に失敗し地元に戻って「青猫」を経営している氏家、氏家と同棲している看護婦の桑原、氏家に思い寄せる野代、東京にいた時分は川村と付き合っていたと自称する竹内などの証言を集めながら、事件当日に起こったことを再現し、自分が感じた違和感の招待に気づく。
【感想・考察】
若者の青春小説ともいえるミステリー。主人公の亮は22~23歳程度の設定なのだろうが、セリフがいちいちハードボイルドで渋い。亮が、千里、妹の桜子、中学時代の友人たちと交わす言葉が優しく楽しい。家庭環境に恵まれず老成したということなのだろうが、いつも醒めていて「自分は薄情だ」と認識しながらも、繊細な感受性を持ち時には熱い思いを表出させる。
ミステリとしてはシンプルだが、主人公たちの魅力で一気に読ませる物語だった。