ごん狐
【作者】
新美南吉
【あらすじ・概要】
狐のごんはいたずらで、兵十が捕まえた魚やうなぎを逃してしまう。その数日後に兵十の母親が亡くなったことを知り、母親が最後に食べたかったであろう魚を逃してしまったことに深い後悔を覚え、自分と同じ天涯孤独の境遇になった兵十に同情する。
罪滅ぼしのため、魚売りからイワシを盗んで兵十に届けたが、兵十はイワシ盗みを疑われ殴られてしまう。それからはごんが自分で集めた栗やキノコを兵十に届けていた。
ある日、兵十の物置に栗と届けていたごんは兵十に見つかる。「魚を逃した狐だな」と言われごんは銃で打たれてしまう。その後兵十は敷き詰められた栗やキノコをみて、「届けてくれていたのはお前だったのか」と気づく。
【感想・考察】
随分昔に読んだことはあるが完全に忘れていた物語。
ごんの贖罪が死の直前まで兵十に届かないのは悲しい。誰もが過ちをしうるが、その思いを行動で伝えていても、空回りしたり相手に届かなかったりする。それはお互いにとって不幸なことだ。
人間同士であれば「ごめんなさい」とか「ありがとう」という言葉で思いを伝えることはできる。言葉だけで行動が伴わなければ軽過ぎてしまう。一方、行動だけで言葉にしないことは「陰徳を積む」ようで格好良く見えるかもしれないが、相手に対して「伝える」努力を省くことで双方が不幸になっているのかもしれない。
思いを伝えられないもどかしさと、思いを伝えることの大事さ に気づいた作品。