ダンナ様はFBI
【作者】
田中ミエ
【あらすじ・概要】
コピーライターとして働いていた女性が、FBIで要人警護をしていた”ダーリン”に見初められ、数年間の手紙や電話のやりとりで結婚に至る。ダーリンはFBIを退き、日本の大使館付きで働きながら、日本で「危機管理」の意識を広めていきたいと考えていた。
ダーリンは危機管理の意識が過剰で、日本での生活ではちょっと浮いてしまうところもあったが、妻に向ける愛情の大きさ、仕事に対する真摯な姿勢、対人関係におけるブレない姿勢、正しいと思ったことを行う実行力がずば抜けた人物だった。
FBIでプロファイリングを重ねてきた経験から「人の内面は、必ず外見に表れる」という信念を持っていて、人の外見に注意し相手のタイプに合わせたコミュニケーションが必要だとしている。また、自分自身の外見も内面を表すし「外見の緩みが内面の緩みに繋がる」という考えも持っていたため「自分はこう見られたい」というイメージに合うよう、服装や身だしなみに緩みが出ないよう厳しく律していた。
自分の仕事に「最低年収」という基準を設けているのも印象的だった。自分のメインの仕事で食っていくことができなくなった時、生活を見直し、別の働き方を見つけなければいけないが、その基準を「年収」に置いていることにプラグマティズムを感じた。
三十年以上前の当時はまだ多くはなかったフルタイムでの共働きにも協力的で、子育てのために協力は惜しまなかった。一方で子供に人生の主導権を握られるのではなく、子供を大事にしながらも、第一優先は「自分自身への投資と成長」としている。
【感想・考察】
「異文化コミュニケーションをベースにしたコメディー」的な内容を期待していたが、かなり実践的な「仕事・生活・危機管理」についてのアドバイスが満載だった。
元FBI の危機管理意識はちょっと常識外れな感じはあるが、30年前の日本で「オレオレ詐欺」のような犯罪を予見していたのはすごいと思う。
危機管理の指南、仕事や生活での自己管理指南として、また作者とダーリンの恋愛物語として読んでも面白い一冊。