わかったつもり~読解力がつかない本当の原因~
【作者】
西林克彦
【あらすじ・概要】
本を読んでいても「わかったつもり」で理解を深めることができなかったり、間違えた解釈をしてしまうことが、どうして起こるのか。また、どうすれば「わかったつもり」を超えて理解を深めることができるのか、について書いた本。
・「わからない」状態であれば分かろうとして調べたり考えたりするが、内容の部分間で整合が取れると「わかった」状態になり、それ以上深い解釈を求めようとしない・
・解釈には書いてあることだけではなく、文脈から導き出した「スキーマ」が意味を引き出す。例えば「布が破れたので、干草の山が大事」という文だけでは意味がわからないが、「パラシュート」という文脈があり、「パラシュートの布が敗れると空気抵抗が減り、落下速度が上がる」、「積み上げられた干草にはクッションの効果がある」という各自が持っているスキーマが引き出されると、部分間が関連づけられ解釈できる。
・一方で、「全体に当てはめられやすいスキーマ」や「良い・無難なスキーマ」を当てはめることによる「わかったつもり」も発生しやすい。新たな文脈を与えることで「わからない」状態に持って行って再解釈をすることで「よりわかった」状態を目指す。
・そう考えると解釈には無限の可能性がある。文章内での整合性が取れないものは「間違い」なので、文章の間違えている解釈を探せ」ということは可能だが、「正しい解釈を選べ」というのはスッキリしないことが多い。
【感想・考察】
本を読んでいても、引っ掛かりなく理解できることは「わかった」として記憶に残りにくい。解釈に斬新さがある時には知的な満足感があり心に残りやすい。例えばキャッチコピーなどでも「長生きしたければ、ふくらはぎを揉め」とか、その間にある文脈がわからない方が引っ掛かりがあって心に止まることが多い。
逆に、さっと読んで無難に理解できてしまう部分は頭に残らないので、ミステリで隠しておきたい伏線だとか、仕事の報告書などで強調したない部分などは「一見論理的整合生が明らかで、深く考えるまでもない」ようにすると良いのかもしれない。
また「こういう喋り方や行動をするのは女性だろう」というスキーマを利用する叙述トリックもあり、日常生活でも「嘘をつかずに相手を誘導する」ことが可能になりそうな気がした。
読み方、読解力についての本だが、書き方・伝え方についても考えさせられる。