マリーの愛の証明
【作者】
川上未映子
【あらすじ・概要】
「ミア寮」の寮生であるマリーは定例のピクニックで、集団から離れ湖のほとりで一人佇んでいた。マリーの恋人だったカレンが訪れ、別れは受け入れるが「私を愛していたのか」を教えて欲しいという。
マリーは「”愛”は証明できないから”無い”ということにはならない。そもそも人は何も無いところから”愛”を生み出すことができるのではなく、どこかにある大きな”愛”の一部を自分のものだと錯覚しているのでは無いか」と言う。
だから「私があなたを愛していたことは証明できない。でも、自分が今誰かを愛してしないからといって”愛”が消えたわけでは無い。今自分が愛されていないからといって”愛”がそこに無いわけではなく、その人が”愛”のことを一度でも知ったことがあるのならば、”愛”はそこにあると言えるのではないか」とカレンに伝える。
【感想・考察】
「ミア寮」の背景説明がないので推測するしかないが、女性限定の孤児院のようなものなのだろうか。誰かの虐待から逃れた少女が集まっているのか、他に目的があるのかはわからない。
それぞれの少女や、看護師のアンナも、愛を希求していたり、愛に怯えていたり、”愛”と格闘している様子が描かれている。静かで淡々とした描写だが、苦しさを超え、生きることと向かい合おうとする力強さが感じられる作品だった。