毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

バカが多いのには理由がある 〈理由がある〉シリーズ

【作者】

 橘玲

 

【あらすじ・概要】

 時事問題などに作者の視点で論を展開していく。

 タイトルにある「バカが多い理由」は、エネルギーを使わない「ファスト思考」で済ませるからだとしている。人間の思考には「ファスト思考」と「スロー思考」がある。進化の歴史では危険な状況に対処するなど、反応的で深く考えず素早く動く「ファスト思考」の重要性が高かった。近代以降、複雑な思考が必要な時は「スロー思考」をする必要があるが、人は「スロー思考」を避け、簡単に結論が出る方法を探ろうとする。マスコミなども、スローな思考を深めるよりもファスト思考に乗る分かりやすい結論を提示しがちになり、結果 「バカ」が増えるという論法。

 

 政治について、正義の捉え方から以下のような分析をしている。

 ①自由主義、②平等主義、③共同体主義 があり、それに加え ④功利主義的な考え方が力を持っているとした。自由主義は功利主義と相性の良い部分もあるが、平等主義・共同体主義は市場原理を否定する。平等主義は共産主義など左翼的な思想に繋がり、共同体主義は右寄りの伝統思想に繋がるが、至上主義への反発という点では繋がりを持ち始めている。一方でどういう政治思想をとる政治家でも、実際に選択できる政策は大差なく、「誰が政権を取っても同じ」という諦観が広まり、投票率が低下している。

 

 歴史の中で日本が成し遂げたすごいこととして、江戸時代の「武装解除」を挙げている。戦国時代には各戦国大名が数千丁の銃を保有しており、世界でもトップクラスの武装レベルだったが、江戸時代に入り武装がグレードダウンした。核武装などエスカレートしがちな武力競争だが、なぜ日本の江戸時代に武装解除が実現できたのか、分析する価値がある。

 

 日本的雇用では、正社員を終身雇用で守る反面、サービス残業などを強要してきた側面がある。飲食などではアルバイトよりも裁量労働で残業コストを削減できる正社員の方がコストが安いことを「発見」し、格安居酒屋などの業態を作ってきた。

 企業に「イエ」のような役割を期待している以上、「ブラック」な労働条件は変わらないと見ている。

 

 日本は自殺が増えているという見方をされている。長期的に見ると確実に人数は増えているのだが、単純な人口増加や、年齢別の自殺者構成の影響を除外すると、実はそれほど大きな変動はないとも言える。

 

【感想・考察】

 いくつかの論点を提示しているが、どれも独自の見解がある。「累進課税は努力した人への懲罰だ」という意見の紹介や、「NGOはエンターテイメント的な分かりやすさを求めている」という分析など、一面しか見ていないと感じる部分が多いが、それでも自分の見解を前面に出して述べていること自体は好感が持てる。

 

 

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