旅する火鉢(ものものがたり1)
【作者】
高樹のぶ子
【あらすじ・概要】
祖父の代からずっと受け継がれ、家の盛衰を見続けてきた大きな火鉢。火鉢に描かれた楽しげな旅人に憧れたのか、祖父は常に旅をする人生をおくった。
ある時、サーカスのテントに誘われ、回転する少女や、火鉢を回す少女を観る。火鉢の絵は遠心力で飛ばされて、テント自体が大きな火鉢になる。
祖父の姿となったピエロは「もう過去を探すのはやめて、そこに今あるものを大事にするんだ」と告げる。
【感想・考察】
「火鉢」という「もの」をテーマとした短編で、ものを媒介に過去に想いを寄せる主人公に「今を生きる」ことを説く。説明的な描写が急に幻想的な表現に飛ぶ感覚は面白い。