私の財産告白
【作者】
本多静六
【あらすじ・概要】
財産の作り方、増やし方について述べた本。50年以上前の著作だが、内容は王道で古さは感じない。日本近代経済の祖となった渋沢栄一やみずほグループを築き上げた安田善次郎などとの交流も描かれる。
特に印象に残ったのは以下の部分。
・財産の増やし方
①収入の4分の1の天引きで、「雪だるまの芯」を作る
吝嗇と節約は違う。外面を気にして財産がないうちから豪奢な生活をしても高が知れている。一時期苦しんでも財産を築いてから大きく使って世界に貢献すべき。
②時局を見極め投資を行う。「2割で利食い、10割で半分売却」が鉄則。
・財産の使い方
①自己を利するだけでは、大局的にはうまくいかない
②お金の使い方は他人がよく見ている
安田氏は財産を築いた後のお金の使い方の計画があったが、発信せず他者からの援助要請を冷たく断る印象があり、結局恨みを持たれ殺害された。一方渋沢氏は大きな財産を築きながらも、「人情」を厚く示すことを忘れず、社会で重要な地位を占めるに至った。著者自身も学校への寄付が多額であったことから、却って反感を抱き退職勧告を受けたが、他者への配慮が足りないことを気づかせてくれたとしている。
・凡人の成功戦略
①「人よりも少しだけ先回りして勉強をすること」
「天才マイナス努力」より「凡才プラス努力」が上に行く。
②職業の娯楽化
本当に楽しい、時間を忘れて没入できることを仕事にすれば、努力を努力と思わず楽しんで進んでいける。
【感想・考察】
「人生即努力、努力即幸福」これが著者の体験社会学の最終結論だと言う。努力を苦労と思わない「職業の娯楽化」が最強だという話はよく見る。この著作では努力を重ねるから娯楽化できるという逆からの視点も提示している。
投資術などは、山林価格の高騰や株式の高騰など幸運もあり、結果論の部分もあるが、「収入の一部を天引きし投資のタネにする」と言う考え方は普遍なのだろう。