Kennie の読書録

毎日1冊本を読み、記録を残したいと思います。

福家警部補の挨拶

【作者】

 大倉崇裕

 

【あらすじ・概要】

 4編からなる短編集。最初に犯行の描写があり、その犯行がどのように暴かれていくかを、犯人の視点から描く倒叙形式のミステリ。小柄で「刑事に見えない」と称される福家警部補が、卓越した観察眼で事件を解決していく。

 

・最後の一冊

 本を愛する図書館の館長雨宮が、図書館を閉鎖しようとしているオーナー江波戸を深夜の書庫に誘い込み、高価な本を盗み出そうとした罪を着せつつ事故に見せかけ殺害する。福家警部補は現場で見つけた違和感から、殺人事件として捜査を進めていく。

 

・オッカムの剃刀

 頭蓋骨から生前の顔を予測し復元する「復顔術」のエキスパートである大学講師柳田が、同じ大学の准教授池内に、ある過去の出来事をネタに脅されていた。柳田は「たまたま夜道を歩いていた池内が、周辺で多発していた連続強盗に襲われ殺された」ように見せかけ殺害する。かつて柳田から犯罪学の講義を受けたこともある福家は、彼が何重にも準備した仕掛けを暴き、柳田が隠したかった過去の出来事を調べ上げていく。

 タイトルの「オッカムの剃刀」は「もっともシンプルな仮定から検証をし、それが不可能であれば次にシンプルな仮定を考える」という話。

 

・愛憎のシナリオ

 女優のマリ子は、同業である女優の恵美にスキャンダルを掴まれ脅されていた。マリ子は排気ガスによる一酸化炭素中毒事故に見せかけ、恵美を殺害する。福家は恵美のへやで感じた違和感をもとに幅広く捜査を行い、マリ子の犯行とその本当の動機を暴いていく。

 

・月の雫

  谷元は「良い酒を造ること」を追及する酒造会社の社長だが、機会による量産で「安かろう悪かろう」の酒を造る佐藤酒造に買収されそうになっていた。谷元は佐藤が醸造蔵に忍び込み、技術を盗もうとして事故死したように見せかけ、殺害する。福家は驚異的な酒豪であることを見せつつ、事件の真相を暴いていく。

 

【感想・考察】

 犯人の立場から書く倒叙形式ミステリは、探偵側から事件解決を描く普通の形式よりも「怖さ」を感じる。罪を犯してしまった自分が追いつめられる状況の方が、感情移入しやすいということなのだろう。小学生の頃に読んだ江戸川乱歩の「心理試験」はとても怖かった記憶がある。

 この作品は犯人が残した「ミス」が比較的わかりやすく書かれており、それほどの「怖さ」は感じなかったが、追いつめられる切迫感を味わうことができた。

 また無表情ながら超人的な体力と卓越した捜査能力で 犯罪を暴く福家警部補というキャラクタもなかなか面白かった。