Kennie の読書録

毎日1冊本を読み、記録を残したいと思います。

さおだけ屋はなぜ潰れないのか?〜身近な疑問から始める会計学〜

【作者】

 山田 真哉

 

【あらすじ・概要】

 身近な事柄を題材に会計学の基礎について学べる本。

 

・さおだけ屋は何故潰れないのか

 客単価が低く、それほど頻繁に売れる訳ではない「さおだけ屋」が、何故全国にあれだけあるのか。企業が利益を出すための二つの手法「売上を増やす」「経費を減らす」という観点から説明する。

 アナウンスしている「二本で1000円のさおだけ」ではなく、実際には「一本5000円のさおだけ」に誘導する、また「さおだけ」を立てる台のリフォーム斡旋で数万円のバックマージンを得るなど、実は売上は大きいという観点と、金物屋が配達のついでにやっていることなので、トラック代や人件費などは金物屋の本業の経費で賄え、「さおだけ売り」自体は限りなくゼロに近い経費で行っているという二つの観点から説明。

 

・ベッドタウンの高級フランス料理店

 交通の便も悪く何の変哲も無い住宅街の中で、特に味で評判になっている訳では無いフランス料理店だが、料金設定は一人数万円程度と高く、客も多く無いのに何故か潰れずに続いてるのは何故か。

 実際はこのレストランで主婦向けの料理講座、ソムリエ講座を行っており、地元の主婦対象だから交通の便はそれほど重要でなく、「高級店」のシェフ・ソムリエが教えていることで箔がつくため、あえて高い料金設定にしていることなどが明かされる。

 鉄道会社が百貨店や不動産業で相乗効果を上げていることなども例に挙げ、強みを活かせる複数業態での「連結経営」で、ローリスク・ハイリターンを目指すことを説く。

 

・在庫の多い自然食品店

 客が多い訳では無い自然食品店に大量の店頭在庫があることから、在庫はキャッシュフローを悪化させるものであり、極力少なくすることが理想であるとする。ものがないことによる販売機会の損失と、在庫を抱えることによるリスクのバランスが大事だと説明し、かんばん方式などにも言及する。ちなみに自然食品店のケースでは、メインはネット販売で、そのための倉庫を実売店にしているため、ほぼ経費をかけずに「連結経営」をしているという種明かしだった。

 

・仕入れた弁当を完売したのに怒られた話

 仕入れた弁当が昼過ぎには完売して満足していたが、社長からはチャンスをロスしているとして叱責された話。完売で満足するのではなく、最大限の利益を上げるためにはリスクを取っても「チャンスゲイン」を狙っていく必要があるとする。

 

・オーラス二着確定の上がり

 十分にトップを狙える位置につけながら、浮きの二着確定で上がったことに不満を覚えるが、実は彼は雀荘店員でトップを取るよりも、回転率を上げてゲーム代を稼ぐ方が効率が良かった、と言う話。

 「売上=単価×売上数」なので、単価を下げて回転率を上げるとことも一つの手法だとする。単価が高く売上数が少ないビジネスはブレが大きくなり、計画を立てにくいが、回転数が高いと計画が立てやすくなると言う利点もある。一方で回転率を上げるために価格を下げていくと、「価格を主たる決定要因とする顧客」ばかりが残ることになり、泥沼の価格競争に陥りかねないことも警告している。

 

・割り勘の取りまとめ役にメリットがある?

 割り勘をするときに、現金を集めながらカード払いとすることで「カード引き落とし日まで無利息で現金を手元に置ける」メリットがあると言う話。個人の場合は大した規模ではないが、B to Bのビジネスでは掛売りが普通であり、買掛債務の支払いを伸ばし、売掛け債権の期間を短縮することでキャッシュフローを改善することが重要だとしている。会社倒産は利益が上がらないだけでなく、現金が足りなくなることが要因となることも多いとする。

 

 最後の章で「数字のセンス」について語る。会計は数字を扱うが大体は四則演算だけですむ。「その数字が意味するものは何か?」「今の自分にとって重要なのはどの数字か?」を掴むセンスの方が大事だとする。

 

【感想・考察】

 会計学の本としては極々初歩的な内容だが、身近な不思議を紐解くことから会計の知識につなげていく手法は素晴らしい。謎を解きたいという好奇心が楽しく読ませる。だいぶ昔に一度読んだ本だが、その時は「さおだけ屋は極悪だな」くらいの印象しか残らなかった。再読して非常に面白く感じたのは、会計実務に関わりが出てきたからだろうか。