Kennie の読書録

毎日1冊本を読み、記録を残したいと思います。

会社の老化は止められない −− 宿命にどう立ち向かうか

【作者】

 細谷 功

 

【あらすじ・概要】

 会社の成長段階を人間とのアナロジーで捉え、構造的に会社の老化は止めることができず、宿命として受け入れるしかない。アンチエイジング的な対処や老化の速度を遅らせることはできるが、老化自体は宿命なので、会社はいつか衰退するものという事実を受け入れて、それに応じた対応をすべきだとしている。

 熱力学の「エントロピー増大の法則」あげ、扱う仕事の量が増えれば人も増えて、部署は細分化され、指揮系統の階層も増えて来る。仕事の量が増えれば詳細なルールが増えるし、伝達のための会議も増えて来る。規模の拡大や仕事内容の質的向上に伴って、人やルールが増えるのは必要なことであるし、成長段階においてはプラスに働く。しかし、成熟段階にあっては「オペレーション」優先の視点となり、新たな価値を生み出す「イノベーター」が生まれにくい土壌となる。

 人間の世代交代は、学習したもの全てをリセットするため、膨大な時間のロスとなるが、それでも新たな活力を生み出すための不可欠なプロセスだと捉え、会社組織でも同様の抜本的な「世代交代」が必要だと説いている。社長の若返りなど部分的な話ではなく、完全に血肉を入れ替えるレベルでの交代が必要だとしている。

 「親子会社」という言葉も人間の世代のアナロジーになっているが、「会社は永続する」という考え方がベースにあるため、子会社は親会社存続のための道具となっていることが多い。実際の親子のように、親は「子の成長を支援し」、「子の独立を促し」、「子の独立後は必要以上の干渉はしない」ような親子会社での世代交代が必要ではないかと提言する。例として上がっていたのが、富士電機の子会社・孫会社で、売上規模では親会社をすでに大きく超えている、富士通やファナックなどである。これらの会社は親会社が富士電機であることすら世間一般にあまり知られておらず、独立した世代交代ができていると見ている。

 特に、大規模となりオペレーションに偏った会社で「イノベーター」は生きづらく、丸くなって生きるか、組織を飛び出すしかないとし、彼らにエールを送っている。

 

【感想・考察】

 「会社は永続できないのだから、世代交代をしなければならない」という視点で、会社という体制にこだわっている部分には違和感を感じていたが、最後の章での以下の論旨に共感を覚えた。

 ICTの進展に伴い、プラットフォーム部分は寡占化による「超集中」が進み、その下では個人や中小規模の会社による「超分散」が進み、大会社という組織の位置づけが変化し、「イノベーター」の活躍場面も変わって来る、という見方だ。

 個人レベルでは、エントロピー増大による複雑化に極力抗い、中期視点での「超集中」「超分散」に対応できる自律力を鍛えておきべきなのだろう。