Kennie の読書録

毎日1冊本を読み、記録を残したいと思います。

オカルト トリック

【作者】

 八槻 翔

 

【あらすじ・概要】

 影の薄い男子高校生「禅」が、奇術師「凛」、占い師「環奈」、サイコメトラー「沙耶」たちと繰り広げる3つの事件、「呪われた少女」、「孤独な少女」、「失った少女」のの連作となる小説。

 「呪われた少女」は、自分との喧嘩が原因で友達が自殺したのではないか、という不安から「呪われた」と思い込み、引きこもってしまった少女「柚葉」を救う話。禅は、柚葉を救いたいと思う「ありす」と凛と共に、柚葉の呪いを祓う。

 「孤独な少女」は、母子家庭の経済的厳しさを助けようとする「夏目太郎」とその妹が主となる物語。母も太郎も忙しさから小学生の妹を孤独な状況に押しやっていた。妹は藁人形の呪いで現状への鬱憤をぶつける。禅は太郎と妹の穢れを祓い家族を救う。

 「失った少女」では、凛とその家族の確執の話。凛は文化祭でも奇術の舞台に立ちたくないと言い、柚葉が作った衣装を破り逃げ出し引きこもってしまう。禅は凛を探す中で彼女の苦しさを知り、凛とその両親の闇を祓う。

 陰陽師の息子で後継として育てられた禅だが、霊能力のない自分が陰陽師として呪いを祓うことに納得がいかず悩んでいた。奇術師の凛に弟子入りし奇術のトリックを学ぼうとしたのも、陰陽師として相手を「騙す」ことを目指してのことだったが、良心の呵責も感じていた。しかし霊感がないなりに行った除霊で実際に人を呪いから解放できたこと、その意味を凛に認めてもらったことから、陰陽師としてやっていくことに意義を感じ、父から受け継ぐことを決意する。

 

【感想・考察】

 陰陽師、サイコメトラー、占い師、奇術師 という、いかにも「ラノベ異能力バトル」的な配陣だが、特別な能力を直接的に描写しているわけではない。凛の論理的な分析で、占いや陰陽師のトリック・仕掛けを分析し、かつ目的が正しければ手段は正当化されるという功利主義的合理性で、悩む主人公を救う。

 占いでは、相手の反応を読む「コールドリーディング」、積極的に相手の背景を調べる「ホットリーディング」抽象的な表現で自分にも当てはまると感じさせる「バーナム効果」などで相手を信じさせた上で、具体的ではないアドバイスを与える。ある意味トリックで相手を騙しているとも言えるが、受けた側が自分自身で持っていた「正解」を後押しし、実際に良い方向に導けるなら価値があるとする。

 除霊にしても、実際に霊による呪いなどはないとしながらも、死者への思いや、自分のかつての行動への後悔などを、呪いという形で自分に定着させている人々を、理屈で救うことはできず、除霊という儀式で解消させるのは実利にかなっている。葬式などが生き残った人の心を整理するために行われているのと同じだ、と言う。

 奇術は人を騙しながら、人を楽しませるというエンターテインメントであるのと同じく人を騙しても、良い方向に導くのであれば良いというのは実に現代的だと思う。

 文章や登場人物のキャラ付けはラノベ的だが、テーマが明確でメッセージ性の強い作品だった。