藪の中
【作者】
芥川 龍之介
【あらすじ・概要】
夫婦が山賊に襲われた事件について、目撃者や犯人、被害者など様々な人が語る。犯人と殺された夫、侵された妻の3人の証言が完全に食い違っていて、どれが真相なのか分からない。人は死してなお、何かを守るため事実を歪めて捉え、事実をゆがめて語る。
【感想・考察】
短いがシャープな印象を残す作品。ミステリ好きからすると「真実はいつもひとつ」という視点で、事件を分析しようとしてしまうが、死者が憑依したイタコの語りが重要な証言だったり、書かれている内容をどれだけ集めても真実にはたどり着けず「藪の中」に残される。何が実際に起こった出来事なのかではなく、「誰が何を思い何を語ったのか」ということ自体が真実であり、全ての出来事を客観的に分析できるというのは思い上がりなのかもしれない。