リスを実装する
【作者】
円城塔
【あらすじ・概要】
リスの生活をシミュレートするプログラムを走らせ、観察する主人公の話。
人工知能的なものではなく、ごく単純化されたパラメータでリスの生態を表現している。覚醒と夢の推移を「+1」、「−1」 と表現していて、覚醒状態と夢と夢の中の夢を極めて単純に表現している。餌を食べた、隠した、餌を隠したことを忘れたなど、多くの項目をシンプルに表現している。
後半では別れた妻と独立した息子の回想を通して、シミュレーションの世界と現実世界を重ね合わせている。
【感想・考察】
パラメータが単純化されている分だけ、抽象的な観念が具体的に理解しやすくなっている。 覚醒と夢を単純な数値のネストで表現しているのが、現実世界と重なってくる。今自分が見ているのは覚醒状態なのか夢なのか確かな基準は何もない。映画「インセプション」と同じような感覚をはるかにシンプルに示している。非常に高い筆力を感じた。