シンギュラリティ・ビジネス AI時代に勝ち残る企業と人の条件
【作者】
斎藤 和紀
【あらすじ・概要】
AIの権威である レイ・カーツワイルが2045年に「テクノロジー進歩の速度が無限大になる」特異点としてのシンギュラリティが訪れると予言した。
カーツワイルが提唱したシンギュラリティは、AIが人間の能力を超えることをゆうのではなく、技術が指数関数的「エクスポネンシャル」に進化をし、ある閾値を超えることで実質的に無限大に速い速度で進化する点がくるとしている。
この「エクスポネンシャル」の凄さを示す例として挙げられているのが、ゲノム解析プロジェクト。15年の期限で取り組まれたプロジェクトだが、7年経過した時点で解析は1%しか進展していなかった。ところがカーツワイルは「1%解析ができたということは、半分以上は終わったということ」だと評価した。実際には当初の予定通り15年で完了したため、7年目1%の解析が終わった段階で半分以上は完了していたということになる。こういう加速感を持って世の中を見ていかないと取り残されると警告している。
またカーツワイルは技術進化は G.N.R(ジェネティクス・ナノテクノロジー・ロボティクス)の革命的な進歩が起きると見ている。進歩の段階として「デジタル化」、「潜行」、「破壊」、「非収益化」、「非物質化」、「大衆化」の段階を踏むとしている。
「デジタル化」は0、1への変換だけではなく、自然界のアナログな現象を評価可能な数値に変えて見ること。
「潜行」は「エクスポネンシャル」な進化は直線的な進化に比べると初期段階の進展が遅く見えるため、大した影響はないと思われる段階。
「破壊」は「エクスポネンシャル」は進化が閾値を超えて変化が明確になること。
「非収益化」は従来収益を上げていた周辺分野の産業が収益を失うことを指す。
「非物質化」は例えば写真が印画紙という物質的なものからデータに移行したことや、ワープロ専用機が一つのアプリになってしまったことなどをいう。
「大衆化」は「非物質化」の影響で価格が下がることで多くの人が使うようになること。発売当初であれば合計で数億円はするテレビ会議、カメラ、音楽再生装置、時計等々様々な機器がスマートフォンに取り込まれたことで安価になり広く使われている。
このような「エクスポネンシャル」な技術進化が、エネルギー・教育・健康・宇宙開発などの分野で「人間の存在を根底的に変える」レベルで進むことが、「シンギュラリティー」の示すものだという。
人工知能に仕事を奪われるのではないかという不安も聞くが、これは産業革命当初に機械が人間の仕事を奪うという恐怖から機械の打ちこわしを行った「ラッダイト運動」と同じような捉え方で、技術は加速度的に進化することを当然として受け入れ、それをベースとした思考ができる人でなければ、先に進むことができないとしている。
そのほか、Uberや民泊アレンジをする Airbnbなどシェアリングサービスの進展にも言及し、技術が社会を変えること、それを見越すことで正しい投資ができるということを主張している。
【感想・考察】
巻末の人工知能専門家との対談で、「人工知能が人の仕事を奪うことの何が怖いのか」との発言があり、全く同感であった。もちろん、より上手く人工知能を使う人に富が集中する傾向は高まるので、富の再分配の仕組みも新たに考える必要があるとは思うが、うまく運用することができれば、人は肉体的・精神的な苦痛から解放され、より生きる意義に直結するような活動を行うことができるのだと思う。
シンギュラリティーが起こるのが、2045年とするとあと28年。なんとか生き延びて、その世界を見てみたいと思う。