量子コンピュータが人工知能を加速する
【作者】
西森 秀稔、大岡 真之
【あらすじ・概要】
実用化が進んでいる量子コンピュータとはどのようなものなのか。その技術が人工知能の発展にどのような影響を与えるのか、
D-Wave社が商用展開を始め、Googleが「
それまで開発がすすめられていたのは、「量子ゲート」
「組み合わせ最適化問題」というのは、例えば「
次に「量子アニーリング」方式の量子コンピュータが人工知能の発展にどのように寄与するかという話。人工知能を急速に発展させたのは機械学習だが、人工知能が学習する際に「様々な要素が結果に対してどのような影響を持つか」ということの関連付け「クラスタリング」を行うことが重要になる。これは「組合せ最適化問題」が各要素の重み付けが決まった状態から最適解を出すことのちょうど反対で、「数多くの結果をサンプリングすることで各要素がどのような重みを持っているか」を出すことにあたる。例えば、猫と犬を見分けるのに当たって、「目の形」、「耳の形」、「口と目の大きさの比率」などどの要素が大事で、各要素にどのような相関関係があるのか等を求めていくことになるのだろう。「組合せ最適化問題」に適した「漁師アニーリング」方式は逆方向で活用できるということになるだろう。
また、量子力学のごく初歩的な説明や、基礎研究の大切さや、完全解が得られなくても実用化に踏み切る思い切りなど、科学者・研究者としての提言もされていた。
【感想・考察】
量子コンピュータという説明の難易度が高い技術に対して、実にわかりやすい説明がされていた。自分の理解がどこまで正しいのか自信のないところもあるが、今実用化されている量子コンピュータがどのようなものなのか、概要イメージを掴むことはできた。「よく理解している人は分かりやすく説明することができる」ことの好例と言える本。