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「司馬遼太郎」で学ぶ日本史

【作者】

 磯田 道史

 

【あらすじ・概要】

 歴史社会学者である作者が、著作を通して見える司馬遼太郎の歴史観を語る。

 司馬遼太郎の作品は「文学」であり歴史研究の対象とはされてこなかったが、小説を通して強い浸透力を持ち、次の時代の歴史に影響を及ぼした「歴史を作る歴史家」だと評価する。

 藤沢周平が歴史の静態を描くの対し、司馬遼太郎は歴史が動くエネルギー「動態」を書いている、

 司馬遼太郎自身は第二次世界大戦で戦場に赴いた経験があったため、昭和初期の日本の狂態はどのようにして生じたのかを描こうとしていると見ている。実際に昭和史の作品は残していないが、そこに至る作品群がその思いを語っている。

 司馬遼太郎は「日本人は思想に陶酔しやすい」傾向があり、「前例に従い付和雷同に陥りやすい」ところがあると見ているとする。

そういった空気に対抗し歴史を開いた人々は「冷静なリアリズム」、「合理主義」、「無私の精神」を持っている人物だとした。例えば織田信長は人を「使う」という観点でしかみない徹底いた合理主義者であった。その思想を具体化した秀吉、それを定着させ受益者となった家康の三人の流れが、歴史を展開させた典型だとする。それ以外の作品でも、司馬遼太郎が取り上げるのは、坂本龍馬のようなリアリストや、大村益次郎のように対人関係に問題があるレベルの合理主義者であったりする。

 大村益次郎の話を書いている時期に三島由紀夫の自決事件があったが、リアリストである司馬遼太郎と、思想に溺れた三島由紀夫の対比がそこにあるとする。

 昭和初期の統帥権がどのように戦争へ繋がっていったのか「この国のかたち」の著述を中心に分析している。

 司馬遼太郎の最後の作品となった「21世紀に生きる君たちへ」という短い作品では、「他者へのいたわり」と「頼もしい生き方」を持って欲しいと願っていた。「他者へのいたわり」は「無私の精神」に繋がり、他人を自分のことのように感じられる共感力であり、「頼もしい生き方」とは、周囲に流されず自分が信じる生き方を貫いて欲しい、ということだろう。

 

【感想・考察】

 司馬遼太郎の作品は小説ではあるが、史実から情報を集め史実を補強するようなストーリーとなっているのが読みやすく面白い。「坂の上の雲」での秋山真之と乃木希典を比べ、どちらも「無私の精神」で格調高いリアリズムを備えていたが、秋山の合理的な態度と、乃木の精神論に偏る態度の対比を語っていたが、私が作品を読んだ時とは全く異なる視点で非常に面白い。

 司馬遼太郎の作品をもう一度読んで見たいと思わせる。

 

 

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