檸檬
【作者】
梶井 基次郎
【あらすじ・概要】
「得体の知れない不吉な塊が心を圧さえつける」という導入。八百屋で見つけた檸檬の美しさ爽やかな匂いに救われる。丸善の画集売り場で画集を見ても鬱々とした気分が晴れなかったが、檸檬を画集の上に置くと色彩が澄み渡った。檸檬を画集の上に置いたまま本屋を出て、檸檬爆弾が爆発することを愉快に想像して立ち去った。
【感想・考察】
散文的な詩なのだろうか。色彩の描写が瑞々しい。「檸檬爆弾」を画集の上に置き去りにして楽しいと感じる感性は、知性や理性で日々戦うなかで「不吉な塊」が心から離れないような状況で、理性的な意味を超えた行為に救いを感じるということなのだろうか。ごく短い話だが、印象深い作品。