記憶の盆踊り
【作者】
町田 康
【あらすじ・概要】
度々酔って記憶をなくす主人公が、飲まない時も記憶が怪しくなり、昔別れた女性と家族と自分の仕事と、その他諸々が徐々に分からなくなり、周りの人々は誰なのか、自分がしていること、自分自身についても徐々に記憶がなくなり、混乱して行く様を描く、ごく短いストーリー。
【感想・考察】
町田 康 独特の畳み掛け、ドライブをかけていくような文章が、記憶を失い徐々に混乱するさまを生々しい躍動感で表現されている。つい数秒前まで自分が依って立っていた場所が失われ、寄る辺ない状況になって行く心細さと恐ろしさが伝わってくる。
認知症というのはこのような感覚なのだろうか。特に感情の豊かで肉体的にエネルギーがある時期に認知機能が落ちて行ことを考えると空恐ろしい気分になった。
20分もあれば読めてしまう短編だが、読後に心が動かされた本だった。