Kennie の読書録

毎日1冊本を読み、記録を残したいと思います。

この日本で生きる君が知っておくべき「戦後史の学び方」 池上彰教授の東工大講義 日本篇

【作者】

 池上 彰

 

【あらすじ・概要】

  池上彰氏の東工大での講義を元にした書籍の第2弾。前回は近代史についてだったが今作は日本の戦後史について、戦後の出来事が現代にどう繋がっているのか説明をしている。

 主な内容は、以下の通り。

 ・自衛隊の存在は合憲か違憲か

  米国(連合国)の意図で武力を持たない体制となった日本だが、ソ連・中国などの社会主義勢力に対抗するため、戦略的に重要な位置を占めるようになった。米国の意向から改めて、警察予備隊を組織し自衛隊に昇格した。

 実は憲法起案の段階から、当初「戦力は保持しない」とあった草案を「国際紛争を解決する手段としては、戦力を保持しない」という文脈に変え、自衛のための戦力は保持できる道を残していた。

 自衛隊の違憲性について地方裁判所レベルでは司法判断がされたこともあるが、最高裁では「高度に政治的で司法が扱うのに適さない」といて違憲立法審査権を放棄している。

 国際貢献の目的や、集団的自衛権の判断基準変更から、自衛隊が海外へ派遣ケースも増えてきたが、現行憲法下では解釈の苦しさは拭えず、改憲の上、正式に国防軍とすべきだというのが自民党政権の考えだと述べている。

 

 ・55年体制から始まる、日本での二大政党制

 社会主義と資本主義の対立が明確で左右の対立軸が明確であった1955年には、社会主義政党が連合し、それに対立する自由党と民主党が合同し自由民主党も成立した。これが55年体制と言われるものだが、その後長く自民党からの政権交代は行われなかった。自民党内部での派閥闘争が実質的な意味での政権交代となっていたが、政策の違いを争うというよりも、内部的な力関係で勢力が決まるため、選挙が影響力を及ぼすことはなかった。時代は下り1990年代になると小沢一郎が主導した政党分裂の多発で、自民党からの政権移行は何度か起こったが、これも本質的な政策を問うものでなく、政権維持のための主義主張を無視した政党同士の連立が多発したため、「どの政党が政権をとっても変わらない」という空気が蔓延してしまっている。

 

 ・1968年 全共闘の時代

 1960年代後半には世界的に学生による反政府運動が盛んになった。日本では反安保闘争で活動した全学連があったが、東大で発生した政府の大学への干渉や日大での学生軽視の姿勢に対して闘争が発生し、戦闘的な学生運動へと発展していった。のちには革マル派と中核派の分裂による近親憎悪的なセクト対立が多発し、あさま山荘事件など内部でのリンチ死が公表され、学生が徐々に引いていった。連合赤軍など一部は更に過激化し、よど号のハイジャックなども引き起こしている。

 

 ・なぜ沖縄に米軍基地が多いのか

  第二次大戦の終戦間際に、米軍は沖縄に上陸し陸上戦闘を行った。終戦後にも沖縄は1972年まで日本に返還されず、米軍の極東戦略拠点として使われてきた。返還後も米軍の戦略上重要な位置をしめるため、基地はそのまま残された。冷戦終結後もなお、対中国・ロシアという意味合いから基地は残されている。

 

【感想・考察】

  古い時代の歴史や、地理的に離れた所の歴史を語るのと比較すると、現代の日本について語ることは、自らの政治的立場を明確にせざるを得ず、ある程度の中立性を求められる、教授・コメンテイターとしての池上氏には難しいところもあるのではないかと感じた。学生に対して自分の頭で考え、常に批判的な視点も失わないように教えてはいるが、どうしても色がついてしまう。

 学生運動を直接体験した世代としては、その時期の空気感を伝えたいと思いつつも、「何の成果も得られませんでした」という自虐的な目線も持っているように思える。改憲なども是々非々で合理的な考え方をしていると思われる。

 現代社会で問題になっていることの起源を知り、考える材料を得るためには役に立つ本だと思う。