彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone?

【作者】

 森 博嗣

 

【あらすじ・概要】

 近未来、人工細胞により人間がほぼ不老不死となるのと引き換えに、生殖能力を急激に失いつつあった。一方、人造人間である ウォーカロンは最初は機械で作られていたが、徐々に人工細胞が用いられ ほぼ全身が有機物となるにいたり、人間とウォーカロンの境が曖昧になってきた。

 主人公である 研究者ハギリ は人間のとウォーカロンの思考の違いから、ウォーカロンを識別する装置を開発していたが、何者かに命を狙われた。続けて人間の生殖力減衰についての研究をしていた生物学者のアリチ博士も毒殺されかける事態となった。

 ハギリはボディーガードである ウグイ に守られながら、地下に隔離され研究を続けていたが、動物学者であるチカサカや、生物学者のリョウと話をする機会を得て、自分の研究が狙われる意味や、自分の命を狙う者たちの意図に気づいていく。

 

【感想・考察】

  森博嗣の作品らしく、超絶理屈っぽい学者の視点から世の中を描写していく。人間が死を失い、世代交代のない世界で永遠に生きたらどうなるかという舞台装置も、作者独特の世界観にマッチしていた。人工知能が進歩していったら人間の知能とどう区別できるのか、肉体までが有機物で作られるようになったら、人間と区別することができるのか、そもそも人間の独自性はそれほど貴重で重要な者ではないのではないか、という疑問が提示されていた。人工知能が飛躍的に進歩している昨今ではリアリティーを感じられる話だった。

 マガタと思われる人物が登場していたのは、S&Mシリーズが大好きだった私には嬉しい。この作者の世界観や理屈っぽい言い回しが嫌いでないなら、面白い本だと思う。