Kennie の読書録

毎日1冊本を読み、記録を残したいと思います。

文学

神様のカルテ0

神様のカルテ1~3の登場人物たちのプロローグのような作品です。真摯に生きる主人公たちの生き方に心打たれ、水墨画のように静謐に描かれた信州の風景に圧倒されます。素晴らしい作品です。 【作者】 夏川草介 【あらすじ・概要】 神様のカルテの前日譚と…

独立記念日

女性の「独立」を描く24の短編集です。原田マハの作品は狙いすましたように感情を揺さぶってきます。「ここで泣かせたるで!」というところに、まんまとはまります。 【作者】 原田マハ 【あらすじ・概要】 親元を離れおしゃれな街で一人暮らしをしたいOL、…

三日間の幸福

寿命を売ってしまった大学生と彼を見張る監視員のお話です。切なく残酷なストーリーですが、最後は優しい気持ちになれます。グズで不器用な主人公に完全に感情移入してしまいました。 【作者】 三秋縋 【あらすじ・概要】 困窮した20歳の大学生クスノキは「…

はさんではさんで

青春文学を募集している「坊ちゃん文学賞」の受賞作品です。弾けるようにキラキラした青春小説ではないのですが、エキセントリックながらもリアルな女子大生「タロウ」にやけに親近感を感じます。 【作者】 甘木つゆこ 【あらすじ・概要】 女子大生の「タロ…

神様のカルテ3

「神様のカルテ」シリーズ第3作目です。 2作目から引用されているセオドア・ソレンソンの「良心に恥じぬということだけが、我々の確かな報酬だ」という言葉が、徐々に沁みて来ます。医療倫理だけでなく、日々の生活を真摯に生きることを後押しするような言…

神様のカルテ2

前作と同じく、地域病院で奮闘する内科医の周囲で起きるドラマを静かに綴っています。今回は冬の終わりから春の終わりにかけての信州の風景が美しく描かれていて、物語の世界にするりと没入してしまいました。良い作品です。 【作者】 夏川草介 【あらすじ・…

神様のカルテ

信州の冬の凛と澄んだ星空に包まれるような空気感に溢れています。主人公の一止と妻のハル、アパートの住民や病院の同僚たちが、皆それぞれ本当に魅力的で、物語世界に引き込まれました。とても好きな作品です。 【作者】 夏川草介 【あらすじ・概要】 信州…

卯月の雪のレター・レター

5編の短編小説集です。青春時代の苦しさと、それを暖かく見守るやさしさが描かれていて、優しい気持ちに慣れました。 ミステリ要素もあるのですが謎解きがメインではありません。ちょっとした「何故だろう」という疑問を紐解いていく過程で、人の苦しみや優…

少年の改良

ロックミュージシャンを目指す少年に、ロックの惨めさや欺瞞を教え、諦めさせようとする男の話です。ロックを諦めさせようとする彼の思考が、どうみても完全にロックなのが面白いです。 【作者】 町田康 【あらすじ・概要】 主人公の男の元に、従姉妹の娘が…

小説の神様

この作者の「ロートケプシェン、こっちにおいで」では、叙述トリック的などんでん返しも、ある人物の二面性を表現しメッセージ性を強める仕掛けとなっているのに感動しました。本作でもメタ的な表現が作者の思いを伝えるスパイスになっています。 プロットの…

最後の将軍 徳川慶喜

徳川幕府最後の将軍として有名な徳川慶喜の話です。 司馬遼太郎氏は史実をベースにしながら、人物のキャラクタを作中で練り上げていくスタイルですが、「徳川慶喜」については最後まで掴みどころがない感じがあったのではないでしょうか。 時代の流れに巻き…

また、同じ夢を見ていた

「私の幸せはだれのものとも違う」「人生とは自分で書いた物語だ。自分次第でハッピーエンドに書き換えられる」というセリフが沁みます。 この作者の作品では「君の膵臓をたべたい」も良かったのですが、こちらの話も大好きです。 【作者】 住野よる 【あら…

漫画 君たちはどう生きるか

昨年くらいからタイトルをよく見るので読んでみました。原著は80年以上前の1937年 に発行されたものです。日中戦争がはじまり二・二六事件が起きた年で、戦争に向けた思想統制が動き始めた時期だと思っていましたが、このタイミングで「自分の経験から始めて…

鉄塔の下で その他の短編

【作者】 赤井五郎 【あらすじ・概要】 不思議な世界観を持つ3つの短編集。 ・鉄塔の下で 子供の頃、誰にも見つからない鉄塔のわきの草むらで空を眺めるのが好きだった。そこでは「リクちゃん」と学校での出来事や山の妖怪の話をしていた。 大人になって、ず…

光あるうちに光の中を歩め

【作者】 レフ・トルストイ 【あらすじ・概要】 冒頭はキリスト教徒が真に神の御心にそった暮らしをしようとしても、現実生活のしがらみに絡めとられ踏み出すことができないシーンから始まる。 次いで紀元100年ごろのローマで富裕な商人の息子であるユリウス…

無人島に生きる十六人

【作者】 須川邦彦 【あらすじ・概要】 無人島で数ヶ月生き延びた16人の実話に基づいた小説。 明治の後半ごろ、南洋漁業の調査船として小笠原諸島に向かった龍睡丸は、強風に帆柱を壊され、海流に乗りハワイまでたどり着く。ハワイで修理をした後日本に戻る…

偽声

【作者】 藤井清美 【あらすじ・概要】 声優を目指す渚の話。 会社を辞め声優養成所に通うがなかなか目が出ない。一緒に学んだ仲間も徐々に脱落していく。 役者である教官からは「声に艶がない」と言われ、「役を愛していない」と指摘される。渚は幼少の頃、…

最後の医者は桜を見上げて君を想う

【作者】 二宮敦人 【あらすじ・概要】 「どれだけ生きるかより、どう生きるかが大事」だと考える医師 桐子は、「死神」と呼ばれながらも、患者に延命以外の選択もあることを示し、尊厳ある選択機会を与える。副院長の福原は「医者は全力を尽くし患者を1秒で…

羊と鋼の森

【作者】 宮下奈都 【あらすじ・概要】 北海道の山間の高校に通う外村は体育館のピアノの調律に立ち会い、音の景色がくっきりと見えることに心動かされ、調律師を目指す。 高校卒業後に調律の専門学校に通い、故郷の楽器店に調律師として就職する。そこでは…

ココロ・ファインダ

【作者】 相沢沙呼 【あらすじ・概要】 写真部員の女子高生、ミラ、秋穂、カオリ、シズ4人のそれぞれの視点から語る4編の短編小説集。 ・コンプレックス・フィルタ ミラが語り手。 ミラはカオリと親しくしているが、自分の容姿に自信が持てず、可愛らしく誰…

蹴りたい背中

【作者】 綿矢りさ 【あらすじ・概要】 うまく学校の友達と馴染めない女子高生の”ハツ”は、ハーフのモデル ”オリチャン”の話をきっかけに、同じようにクラスで浮いている”にな川”から話しかけられる。オリチャンのラジオ番組を必死に聞く にな川にもの哀しさ…

羅生門

【作者】 芥川龍之介 【あらすじ・概要】 平安時代の「今昔物語集」を原典に芥川龍之介が短編小説にした作品。 不況の煽りを受け解雇された下人が「生きるためには盗人となるか、そうすべきではないか」との葛藤を抱え、羅生門の下で雨をしのいでいた。 夜中…

ヒロインの格式

【作者】 神崎京介 【あらすじ・概要】 友美は身勝手な恋人の藤野に振り回される。深夜に呼び出され、事が終われば邪魔者扱いで追い払われる。完全に「都合の良い女」だが「藤野を喜ばせたい、藤野の喜びが自分の喜び」と感じ振り回され続ける。 友美は友人…

肉体の悪魔

【作者】 レイモンド・ラディゲ 【あらすじ・概要】 20世紀初頭、第一次世界大戦のフランスが舞台。15歳の僕は18歳のマルトと出会い、互いに恋心を寄せるが、その時にはマルトは既に婚約していた。 マルトはやがて結婚するが、まもなく夫は戦地に赴く。16…

【作者】 菊池寛 【あらすじ・概要】 摂津の侍であった中村新兵衛は高名な槍の使い手で、その猩々緋の陣羽織と金の唐兜は、敵に脅威を味方に頼もしさを与えていた。 ある日、新兵衛と親しい間柄にある若侍が、「初陣で手柄を上げたいので、新兵衛の猩々緋と…

幸せになる、はじめの一歩 『ある』と『ない』の物語 ~『ない』を『ある』に変える編~

【作者】 夢野さくら(文) たかお(イラスト) 【あらすじ・概要】 母親と一緒にクリスマスケーキを作りたかった「アイリ」。ケーキを一緒に作ることができず拗ねていると、ウサギのセバスチャンが現れ、彼にに導かれ別の国にたどり着く。 そこでは女王から…

日の名残り

【作者】 カズオ・イシグロ 【あらすじ・概要】 ダーリントン・ホールの執事として働く スティーブンス。 前の主人であったダーリントンが亡くなり、アメリカの実業家ファラディが新しい主人となる。スティーブンスは「アメリカンジョーク」を期待通りに返せ…

人間失格

【作者】 太宰治 【あらすじ・概要】 ある男の手記を見た小説家の記録として書かれる。3枚の写真を見て、幼いころの卑屈な笑顔、青年期の空虚な笑い、老年と思われる何の感情もない顔を見て、嫌悪感を覚える。 田舎の裕福な家に生まれた「葉蔵」は幼いころか…

風鈴

【作者】 松浦理英子 【あらすじ・概要】 まだ小学生だった「アオイ」と「ワタル」は、田舎の町で暮らしていた。俳優の父親を持つ「ミヤビ」が父親の撮影に付き合って、夏休みの時期に二人の住む街へ訪れる。ミヤビは二人にボルダリングを教えつかの間の田舎…

偽ガルシア=マルケス

【作者】 古川日出男 【あらすじ・概要】 ガブリエル・ガルシア−マルケス ではない ガブリエラ・ガルシア−マルケスは「私は誰なのか」と問いかける。ガルシア−マルケスの代表作のイメージを再構築して投げかける。物語を育む場として「家」を中核に据えてい…