毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

正しいストーカー殺人 警部補 姫川玲子

【作者】

 誉田哲也

 

【あらすじ・概要】

 ストーカーに襲われた女性が反撃して相手を殺してしまう事件が発生。単純な事件として決着しかけていたが、加害者がストーカーをされるほど魅力的なのかひっかりを感じた玲子が、携帯のアドレス登録が極端に少ないことなどから、「消したい過去」があるのではないかと感じ、前の職場などを調べ事件の真相に迫っていく。

 

【感想・考察】

 誉田氏のミステリは初めて読む。キャラクタの描写が楽しげで、関連作品を読んで見たいと思う。

 

現役東大院生3人が書いた 頭の回転がすぐに3倍速くなる3つのテクニック

【作者】

 くろまあくと

 

【あらすじ・概要】

 頭の回転を速くする方法を述べた本。ポイントを端的に述べると、「あまり使われていない右脳の能力、無意識の能力を活かして、左脳も含めた全体としてのパフォーマンスを上げる」ということになる。

 具体的な方法としていくつかの例を挙げている

 まず速読の方法として、「意味を把握できないくらいのスピードで文字を追う。右脳がイメージとしてパターン認識をしようと努める。次に読むときは最初よりもずっと速く読むことができるようになっている」という手法を説明している。速聴も同じ。限界を超える刺激を脳に与えて、左脳で意味を論理的に受けることができない状況で、右脳のパターン認識能力を向上させ利用するという考え方。

 そのほか、一点を集中して見ることで集中力を増す方法、クラッシック音楽や深呼吸でリラックスする方法、成功のイメージトレーニングをすることなどを挙げている。

 

【感想・考察】

 短い本なので速読の方法なども具体的なテクニックを説明するものではなかったが、「理解の限界を超えた刺激」を利用しようというエッセンスだけでも面白いと感じた。

特に本を速く読めるようになりたいと思っているので試してみたい。

 

エイプリルフールに百歳で死ぬということ

【作者】

 奥田轍

 

【あらすじ・概要】

 36の掌編小説集。日常の生活を切り取った話や、不思議なショートショート的な話、コメディー的なオチのあるものなど、バラエティーに富んでいる。

 

 中でも以下の作品は印象に残った。

 

・絵画教室

 老人養護施設などで絵画教室の先生をやめることになった妻。生徒のことを考え真摯に取り組む姿勢と、彼女の思いに癒され励まされ、彼女を支えようとする老人たちの思いが美しい。

 「『私は恵まれている。皆さんがとても良い人だったから』と妻は言う。だけど、それはやはり妻の才能だと思う。出会う人皆がいい人であるはずがないし、もし、そう思えるのなら、出会った人のことを、そう受け止めることが出来たからだと思う」というセリフは素晴らしい。

 

・月明かりと勇気

 病院の窓から外を眺める女性に心を奪われる主人公。かつて父から「悪人とは自分勝手な人のことだ」と言われ、相手の気分を害するかもしれないという臆病さを持つ。自分の行為はストーカだと感じ、しばらく病院の近くを避けるが、ある月夜、久々に病院の近くを通った時、病院を抜け出していた彼女と偶然である。月明かりに背中を押され、少しだけ彼女に声をかける。

 

・自転車を盗んだ

 なんだか色々とうまくいかない日、ふと出来心で自転車を盗んでしまう主人公。盗んだ自転車のチェーンが外れ、徹底的についていない自分を呪い、自転車を捨てて帰ろうと思うが、偶然通りかかった女性が必死にチェーンを直してくれる。「自分はまだ戻れる」と感じ、自転車を元の場所に戻し、少しだけ明るい気持ちになる。

 

・チューリップ

 母に対して感謝の意を示していなかった自分。いつか誕生日に何気ない増加を贈ったことをものすごく喜んでくれた。いつかは、ちゃんとしたものを贈ろうと思いつつ、その「いつか」はなかなか来ない。

 

・テレビばかり見ていた悪人

 「共通認識としての善意が崩壊した社会」、「人を信用することを警戒する社会」、「悪事が悪いのではなく、悪事が露見することだけが問題だという人を育ててしまった社会」というテレビの評論を見て受け流す主人公。動物の虐待や器物損壊など、バレなければいいと考える。主人公の元に訪れた女性がネット配信で動物虐待を暴き、ネットで炎上する。ネット嬢の人々は「常に見られていると思え」、「俺はいいことしかしない」という。結局は自律的な良心よりも「誰かの目」が強いのか。

 

・もんじゃ

 誰かに喜んでもらおうとプレゼントを選ぶ人たちの姿、もんじゃ焼きを作りながらかわす友達との何気ない会話が、追い詰められた主人公の心を救う。

 

・エイプリルフールに百歳で死ぬということ

 祖父が百歳で老衰で死んだ。祖父の子供と連れ合いの6人以外は葬式に参加してはいけないと言われる。孫である自分の結婚式には魂のこもった詩吟で感動を与えてくれた。祖母に先立たれたが生きることに執着のある祖父だった。祖父の生き様に思いを馳せる。

 

・彼女には存在しない時間

 甥っ子が恋をした。地方都市に住む彼は彼女を追って東京まで来る様子をネット中継する。東京に着いた彼は彼女に年上の恋人がいることを知り落ち込む。落し物をして困っている女性を、ごく自然に助け、感謝されることで、少しだけ優しい気持ちになり、彼女の幸せを願う言葉でネットの中継を終わらせる。

 

【感想・考察】

 「共通認識としての善意が消えた社会」かもしれないが、「人を信用して受け入れること」、「ほんの少しの勇気を持って踏み出すこと」、「日々を真摯に生きること」で日々は少しずつ明るくなっていくという、人生に対する信頼感があふれる作品。

 

 

体育館の殺人

【作者】

 青崎 有吾

 

【あらすじ・概要】

  高校を舞台とした殺人事件。体育館で放送部部長が殺された。外部につながる扉は全て施錠され、渡り廊下につながる出口には常に人目があったため密室での殺人であった。語り部となる卓球部1年生の柚乃は嫌疑をかけられた先輩の佐川を救うため、ダメ人間高校生である裏染伝馬に解決を依頼する。

 現場に残された一本の傘を鍵に謎を解き明かしていく。

 

【感想・考察】

 オタクで怠惰でコミュ障である高校生探偵のキャラクタが強烈だが、内容はラノベ的ではなく本格推理。全ての材料を示した後に「読者への挑戦」を挟んでおり、純粋に謎の推理を楽しませる。途中で読み返しすべての伏線を拾いなおしたミステリは久しぶりだった。一度目には気付かなかった伏線に2週目で気付いたときは快感で、こういう感じがミステリの醍醐味なのだと改めて感じた。

 ミステリ作家いうのは、冊数を重ねるごとに心理描写や社会問題の提起などテーマ性を高め文学作品に近づいていく傾向が強いが、こういう純粋なミステリももっと読みたいと思う。

 

天上の飲み物

【作者】

 三浦 しをん

 

【あらすじ・概要】

 永遠の命を持つ吸血鬼が、人間の生活に近づくため、生活を夜型から朝方に変え、ニンニク料理を食べ、生き血の代わりにワインを飲む。

 恋に落ちても年老いることのない自分はいつか相手から離れなければならない。それでも、永遠の命を持つ自分から見ればくだらないことに悩む人間が愛おしい。

 恋に落ちた相手に自分の血を与え永遠の命を分かち合おうとするが、限りあるからこそ、限りあるものに惹かれるのだと気づく。

 

【感想・考察】

 吸血鬼の恋に落ちた相手の飾らない生き方が美しい。限られた命の中で日常の小さいことに心惑わされながら生きる人々を応援するような作品。

 

さおだけ屋はなぜ潰れないのか?〜身近な疑問から始める会計学〜

【作者】

 山田 真哉

 

【あらすじ・概要】

 身近な事柄を題材に会計学の基礎について学べる本。

 

・さおだけ屋は何故潰れないのか

 客単価が低く、それほど頻繁に売れる訳ではない「さおだけ屋」が、何故全国にあれだけあるのか。企業が利益を出すための二つの手法「売上を増やす」「経費を減らす」という観点から説明する。

 アナウンスしている「二本で1000円のさおだけ」ではなく、実際には「一本5000円のさおだけ」に誘導する、また「さおだけ」を立てる台のリフォーム斡旋で数万円のバックマージンを得るなど、実は売上は大きいという観点と、金物屋が配達のついでにやっていることなので、トラック代や人件費などは金物屋の本業の経費で賄え、「さおだけ売り」自体は限りなくゼロに近い経費で行っているという二つの観点から説明。

 

・ベッドタウンの高級フランス料理店

 交通の便も悪く何の変哲も無い住宅街の中で、特に味で評判になっている訳では無いフランス料理店だが、料金設定は一人数万円程度と高く、客も多く無いのに何故か潰れずに続いてるのは何故か。

 実際はこのレストランで主婦向けの料理講座、ソムリエ講座を行っており、地元の主婦対象だから交通の便はそれほど重要でなく、「高級店」のシェフ・ソムリエが教えていることで箔がつくため、あえて高い料金設定にしていることなどが明かされる。

 鉄道会社が百貨店や不動産業で相乗効果を上げていることなども例に挙げ、強みを活かせる複数業態での「連結経営」で、ローリスク・ハイリターンを目指すことを説く。

 

・在庫の多い自然食品店

 客が多い訳では無い自然食品店に大量の店頭在庫があることから、在庫はキャッシュフローを悪化させるものであり、極力少なくすることが理想であるとする。ものがないことによる販売機会の損失と、在庫を抱えることによるリスクのバランスが大事だと説明し、かんばん方式などにも言及する。ちなみに自然食品店のケースでは、メインはネット販売で、そのための倉庫を実売店にしているため、ほぼ経費をかけずに「連結経営」をしているという種明かしだった。

 

・仕入れた弁当を完売したのに怒られた話

 仕入れた弁当が昼過ぎには完売して満足していたが、社長からはチャンスをロスしているとして叱責された話。完売で満足するのではなく、最大限の利益を上げるためにはリスクを取っても「チャンスゲイン」を狙っていく必要があるとする。

 

・オーラス二着確定の上がり

 十分にトップを狙える位置につけながら、浮きの二着確定で上がったことに不満を覚えるが、実は彼は雀荘店員でトップを取るよりも、回転率を上げてゲーム代を稼ぐ方が効率が良かった、と言う話。

 「売上=単価×売上数」なので、単価を下げて回転率を上げるとことも一つの手法だとする。単価が高く売上数が少ないビジネスはブレが大きくなり、計画を立てにくいが、回転数が高いと計画が立てやすくなると言う利点もある。一方で回転率を上げるために価格を下げていくと、「価格を主たる決定要因とする顧客」ばかりが残ることになり、泥沼の価格競争に陥りかねないことも警告している。

 

・割り勘の取りまとめ役にメリットがある?

 割り勘をするときに、現金を集めながらカード払いとすることで「カード引き落とし日まで無利息で現金を手元に置ける」メリットがあると言う話。個人の場合は大した規模ではないが、B to Bのビジネスでは掛売りが普通であり、買掛債務の支払いを伸ばし、売掛け債権の期間を短縮することでキャッシュフローを改善することが重要だとしている。会社倒産は利益が上がらないだけでなく、現金が足りなくなることが要因となることも多いとする。

 

 最後の章で「数字のセンス」について語る。会計は数字を扱うが大体は四則演算だけですむ。「その数字が意味するものは何か?」「今の自分にとって重要なのはどの数字か?」を掴むセンスの方が大事だとする。

 

【感想・考察】

 会計学の本としては極々初歩的な内容だが、身近な不思議を紐解くことから会計の知識につなげていく手法は素晴らしい。謎を解きたいという好奇心が楽しく読ませる。だいぶ昔に一度読んだ本だが、その時は「さおだけ屋は極悪だな」くらいの印象しか残らなかった。再読して非常に面白く感じたのは、会計実務に関わりが出てきたからだろうか。

 

晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ

【作者】

 大崎 梢

 

【あらすじ・概要】

 成風堂書店シリーズの番外編。連作短編集ではなく長編になっている。

成風堂で働く杏子の元に、以前の同僚であった美保からの手紙が届く。「今働いている信州の書店「まるう堂」で幽霊が出る、成風堂で「書店に関わる事件」を解決する探偵として有名な、多絵と一緒にきて欲しい」

 杏子と多絵は、8月の終わりに遅い夏休みを取り信州を訪れる。幽霊事件を調べるうちに、27年前に起こった作家殺人事件の謎が関わっていることが見えてくる。作家を殺したとして逮捕され、獄中死した書生の残した思いとは何だったのか、多絵の推理で真相が浮かび上がってくる。

 

【感想・考察】

 本屋マニアが全開になっている連作短編集「配達あかずきん」と「サイン会はいかが」も面白かったが、この長編も違った面白さがあった。短編ではごく日常的な出来事の謎をといていく話だが、本作では殺人事件を扱うオーソドックスなミステリになっている。容疑者との会話の駆け引きや伏線の張り方など、長編だからこそできる本格ミステリ仕立てでじっくり楽しむことができた。また、晩夏の信州の少しさびれた空気感がよく表現されていた。雨が降り出し「水墨画のような」風景になる情景が鮮やかに眼に浮かぶ。作者の描写の力量に改めて驚いた。

 

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