毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

苫米地博士の「知の教室」 本当の知性とは難しいことを分かりやすく説明することです!

【作者】

 苫米地 英人

 

【あらすじ・概要】

 苫米地氏が会員制のコンテンツで公開している質疑の内容を書籍化したもの。

時間や空間、因果、縁起や悟り、正義などについて、苫米地氏独特の見解を示している。面白いと思った部分を列挙する。

・世界は四次元、上下左右奥行だけでは確定しない。人と人が出会うためには時間軸も定める必要があるので、4つの座標で確定できる。

・時間は未来から過去に向かって流れる。過去に起こったことが原因で未来に何かが起こるわけではない。一方で人間は思考で未来を変えることができる。未来を臨場感を持って具体的に思い描くことで未来は変わる。

・感情のコントロールは必要、感情自体は生理現象なので発散させる必要はあるが、TPOをわきまえる。感情の対象への具体的な対処対応は、感情を排して論理的に考える。

・因果関係はない、全ては縁起から波及している。地震のP波、S波はそれぞれ因果間関係はないが現象だけを見ると、P波がきたからS波が来るようにも見える。両者の関係を解析することで実利はあるが、それ自体に因果関係はない。

・情報量の不足が盲点を作る。十分な情報があれば目の前のものを見ることができる。

・こだわりを持つのは良いが、一つの事だけに傾注するとバランスを崩す。物事を並列処理するのは難しいが、抽象度を上げていけば可能。

・幸せとはフラットな状態で、「今日より明日が良い」という予感があること。

・事なかれ主義が一般的な人間の性向。勝ったら200万円もらえるけど、負けたら100万円を払うゲームに躊躇なく参加できるか。

・二律対抗するもののバランスを取るのは公平だが、アプリオリな正義というものはない。

 

【感想・考察】

  別の著書でフィンテックをわかりやすく説明して、この著者に興味を持った。この本は、彼に心酔する人たちがインタビューする形式だったが、極端な持ち上げ方がカリスマ性を煽るようで違和感を覚えた。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグはロックフェラーの家系だとか、真偽不明の話も結構出てくる。

 とはいえ、独自の視点で興味深い話も多く、複雑なことを分かりやすく説明するために具体的な話と抽象的な話をバランスよく織り交ぜているのは素晴らしい。苫米地氏のキャラクタから距離を置き、内容を取捨選択すれば有益な書物だと思う。

 

 勝ったら200万、負けたら100万の例で感じたのは、「リスクで沈まない体力があれば、無限に挑戦できる」ということ。50%以上の勝率が見込める勝負で、負けた場合のリスクに耐えられれば、挑戦の回数を増やすほど成果が上がっていく。少しずつでも勝率を上げることと、底力をつけることに集中したいと思わせる内容だった。

 

仕事は楽しいかね

【作者】

  デイル・ドーデン

 

【あらすじ・概要】

 空港に足止めされた主人公が、ある老人から「仕事は楽しいか」と聞かれる。老人は著名な経営者でコンサルタントとしても引く手あまたという人物だった。彼は「試すことに失敗はない」という。

 

コカコーラの成功は、「様々な新製品を開発していた薬局店主」が、「たまたま」従業員が咳止めの薬を水で割って飲んでいるのを見て、ソーダ割りにして売り出すことを思いついた。リーバイスの成功は、ゴールドラッシュで集まる人に道具を売り込んでいたが、ズボンはないかと聞かれたときに「たまたま」売れ残っていたテント用の帆布を使ってズボンを作ることを思いついた。

「数多くのチャレンジ」をして、「偶然のチャンスを活かせるような心構え」を持つ人に、成功が訪れる。「必要は発明の母」だが「偶然は発明の父」で両方が揃い、それを受ける体制が必要だという

 

【感想・考察】

 「やりたいこと」、「自分が没頭できる大好きなこと」に情熱を傾けるのが成果を出す近道であることは間違いないが、「何が好きなのか分からない」、「やりたいこと」に出会えていないという人も多いだろう。まずは何かを試すこと、試して昨日と違う今日を迎えること自体を楽しむ、そういう姿勢が良い方向に導くこともあるのだと思う。

 「試すことに失敗はない」と考えていきたい。

 

プリオン説は本当か? タンパク質病原体説をめぐるミステリー

【作者】

 福岡 伸一

 

【あらすじ・概要】

 羊のスクレイピー病や狂牛病などの病原は、ウイルスや細菌ではなく、変性したプリオンタンパク質自体が感染性を持っているとの説がノーベル賞を受賞した。

 

 ウイルスとは思えない程小さい、ウイルスよりも熱などへの耐性が高い、ことからウイルス以外が感染源になっている可能性が考えられ、感染した羊の脳に見られる変性プリオンタンパクを健康な羊に接種すると発病することが確認された。また、正常型プリオンを持たないノックアウトマウスでは、発症したマウスから感染しないことからも、変性プリオンタンパク自体が病原だという「プリオン説」が提唱さた。

 

 タンパク質は、DNAからRNAを経由して複写されていくというのが、生命のセントラルドグマだったが、DNAを持たないタンパク質自体が他のタンパク質を連鎖的に変性させているという「プリオン説」は画期的な考え方だった。提唱したプルシナーはノーベル賞受賞に至っている。

 

 しかしこの著者は、感染の有無を確認するバイオマーカーとしてのプリオン発見は偉大な功績だとしながらも、ウイルス等が原因である可能性は排除されておらず「再審」が必要だとしている。反論の根拠は以下の通り。

・「ウイルスではありえない程小さい」というのは電離放射線による不活性化で確認されたが、当時(1960年代)のデータはすべて概算値であり、現在見直すと分子量90万~150万ほどで小さいウイルスとしては十分にあり得る。

・「高熱に耐性」があるとしたグラフも時間軸が指数で示されており、初動の大幅な減少が無視されやすくなっている。

・脳においては変性プリオンの蓄積と感染性が比例しているが、脳以外の唾液腺などのリンパ節などでは感染性が先に増え、後追いで変性型プリオンが蓄積してる。これは変性画型プリオンが原因なのではなく、「何らかの原因で症状が発生し、その結果として変性型プリオンが蓄積した」と考える方が自然。

 

 このような理由から、著者たちのグループは「プリオンタンパク質は感染源ではなく、感染を媒介するレセプターなのではないか」という視点から、ウイルスなど他の病原の存在を追及している。

 

【感想・考察】

  「科学的なものの見方」はどういうものなのかを教えてくれる本。プルシナー達はプリオンを狂牛病などの感染を確認する基準マーカーとしてプリオンを見出し、感染拡大を防止したことには間違いなく貢献しているだろう。一方で「プリオン説」は変性プリオン自体を病原とみることから、「プリオンの蓄積が無い24か月未満の牛は安全」、「プリオンが蓄積しやすい脳や脊髄以外は安全」といった捉え方をされ、もし実際にはウイルスなどが原因だった場合には危険な考え方ともいえる。

 また、感染源の10倍希釈を繰り返し、感染力を確定するために何千何万の検体が必要なことや、C型肝炎など電子顕微鏡でもウイルスが発見できない中で感染源を特定していくことが、砂漠の中で一粒の砂金を探すほど大変な作業なのだということが理解でき、医療研究者には頭が下がる思いだ。

 科学的な説明が分かりやすく書かれており、良書だと思う。 

 

10倍速く書ける 超スピード文章術

【作者】

 上阪 徹

 

【あらすじ・概要】

 多作なブックライター上阪氏による伝わりやすい文章を速く各技術についての本。

従来以上に「書く」必要性が高まっているが、文章を書くことに苦手意識を持つ人も多い。普通の文章であれば、美しい表現にこだわる必要はなく、伝わりやすい文章を速く書くためのやり方を伝えたいとの思いから書いている。

 ポイントを箇条書きで書くと以下の通り。

・LINEなど「用件のみ」を伝える文章は速くかける。

・自分が消化していない抽象表現は伝わらない。「当社は良い会社です」というコピーは何も伝えていない。「有給消化率が高い」のか「離職率が低い」のか、「ボーナスが高い」のか、具体的であれば伝わる。

・「起承転結」にこだわる必要はない。ビジネス文書では「結」がまず求められる。

・書く前に「素材」集めから始める。「素材」があれば速く書ける。

・「独自の事実」、「エピソード」、「数字」をキーにすると書きやすい。

・「書く理由」、「真の目的」、「対象者」を明確にする。

・書く対象は、知人の一人をイメージするとよい。

・相手のレベル感を掴んで分かりやすい文章を書く。

・たくさん書いて後で削る方が楽。

・雑談や連想ゲームで素材を膨らませる。

・書き出しの掴みは大事。ここだけは技術を学んでもよい。

・一文を短く。形容詞を極力避ける。不必要な接続詞を避ける。対象者によって専門用語の使い方を意識する。

・遂行は必ず必要

 

【感想・考察】

 この本に記載されている日本語自体が「文章講座」の例になっていて読みやすい。一文が短く、必要な項目が強調され、形容詞が少ない。

 ビジネスでも日常生活でも、文章で意思を伝える機会は多く、伝わりやすい文章を素早く作ることで差が出るのは間違いない。綺麗な知的に見える文章ではなく、一見して分かりやすい文章を身に付けたい。

 

脳科学意が教える他人に敏感すぎる人がラクに生きる方法

【作者】

 高田 明和

 

【あらすじ・概要】

 医学博士が書いた 敏感すぎる人についての本。

世の中には周囲の環境に敏感な人間が20%程度はいて、HSP(Highly Sensitive Person)と呼ばれている。これは性格の弱さではなく「気質」だとしている。人よりも敏感に周囲に反応するため、周囲に影響され生きにくいと感じている人が多い。

 周囲の人も自分自身も「内向的」、「臆病」というレッテルを貼ってしまうことが多く、ストレスをためやすい。対人関係だけでなく、光や音などの環境にも過剰な反応をする人も多い。人によって過剰反応を示す対象は多様。うつ病と診断されることも多いが、通常状態から何らかの原因で内向きになってしまううつ病とは異なり、元々の気質であるため、薬等の治療は一般に効果がなく、悪影響を与えることもある。

 作者自身も敏感すぎる人であり、同じ悩みを持つ人に以下のような提言をしている。

・敏感な人は参謀的な役割に向いている。社会で必要な存在だと自覚を持つ。

・芸術家などは敏感な人が多い。敏感だから見える世界があり表現できることがある。

・敏感さは必ずしも「内気」、「臆病」と繋がらない。自分にレッテルを貼らない。

・広い人間関係よりも、自分を理解してくれる少数との深い関係が大事。

・自分と他人の境界を作り、他人のことを自分のこととして考えない。

・周囲の人や環境が深いと感じたら極力逃げる。

・「断ること」は相手のためにもなると考え、良いことと捉える。

・呼吸に意識を集中するだけでリラックスできる。

・完璧を求めず、まあまあで納得する。

など。

 

 

【感想・考察】

 著者は医学博士だが、著者自身の経験と対応策を書いたもので、医学的な分析や見解があるわけではなかった。むしろ電磁波の影響など若干オカルト気味の話もあった。

 私自身は過敏になる傾向は弱いと思うが、周囲には敏感な反応をする人もいて、そういう人の考え方・感じ方が少し理解できたような気がする。

 

青白く輝く月を見たか? Did the Moon Shed a Pale light?

【作者】

 森 博嗣

 

【あらすじ・概要】

 Wシリーズの6作目。原子力潜水艦に備えられたコンピュータ「オーロラ」は北極海の海底で、人工知能として学習を続けていたが、長らく動きを止めていた。「オーロラ」は何らかのジレンマを抱えており暴走することも懸念されたため、マガタ博士の要請を受けたハギリとウグイが「オーロラ」との接触を試みる。「オーロラ」は対話を拒み潜んだままだったが、北極に浮かぶ月を見たハギリは、自分が追い求めている生命の本質に迫る研究と、「オーロラ」が抱えている想いが同じ方向を向いているのではないかと気づき手紙を出す。最終的にハギリたちの前に「姿」を表した「オーロラ」は、人工知能も人間も超越したものだった。

 

【感想・考察】

 Wシリーズの舞台装置は一貫して「生命とは何か」、「知性とは何か」、「人工的な知性や生命を作り出すことはできるのか」 という問いかけに使われている。「人工細胞を使い生殖能力を失った人間」、「有機的な人工細胞を使った人造人間であるウォーカロン」、「数十年にわたり学習を続けてきた人工知能」、「ハードウェアの束縛からものがれた人工知能であるトランスファ」など、SF的な設定ではあるが、どれも現存する生命・知性からは何かが欠損しており、「それでもこれは生命なのか」という疑問を投げかける。

 森氏は数十年前の初期作品の頃から、「発想の飛躍こそが人間の能力」という主張をしていたが、Wシリーズでは「何らかのエラーが蓄積することで、合理性からの偏向が生じ、ゆらぎ・飛躍を生じさせる。これが生命を生命たらしめている」という認識にまで消化している。人が人であるのは、思考が揺らぐからであり、人工知能であってもエラーの蓄積から生命としての揺らぎを得る可能性があるということだろう。

 また、このシリーズの魅力のひとつは、ハギリとウグイの掛け合いの面白さだが、今作ではウグイが「嬉しい」と初めて自分の感情を口に出していたのも印象深い。ウグイの立場も変わり次回作以降ハギリとの関係がどうなるのか楽しみだ。

 

 

世界でもっとも深い迷宮

【作者】
 円城 塔

【あらすじ・概要】
 ロールプレイングゲームの原型といえる「ゲームブック」が、媒体を本からゲー
ム、スマホと移り、「タッチパネル」という触覚を得たり、「カメラ」という視覚を
得ることで進化していく。やがて「ゲームブック」は読者の反応を知る手段を得て、
リアルタイムにより面白い話を紡ごうとしていく。面白がっているならさらに盛り上
げ、退屈しているなら話を変える動的なストーリ構築を目指していく。

【感想・考察】
 円成氏らしい、電脳世界をメタ視点から描く。人間同士が対面するときは相手の反
応を見ながら話の内容を調整していくのは普通の事だが、ゲームや本などのメディア
がユーザのフィードバックを得て動的にストーリを作るというアイディアは面白い。
AIが更に進歩していけば、「動的な小説」が実現するのかもしれない。

 

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