毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

アンネの日記 増補新訂版

【作者】

 アンネ・フランク

 

【あらすじ・概要】

 ドイツ政府によるユダヤ人迫害を逃れ「隠れ家」で過ごしたアンネ・フランクの日記。最初の方は子供らしい直情的な記述で友達をこき下ろしたりしていたが、信じられないペースで精神的な成熟を果たしている。

 アンネとアンネの両親・姉、ファン・ダーンの両親とペータの一家、歯科医のデュッセルさんの八人と、彼らを支援する多くの人々がドイツ支配下のオランダでどのように過ごしたのかが克明に記されている。

 「隠れ家」から出ることができない息苦しい生活の中で、家族や同居人に対して鬱屈した感情を覚えて行くこと、唯一の年頃の異性に対して、抗いようもなく恋に落ちることや、隠匿生活を支援している善良なオランダ人に対する感謝などが日記形式で記録され、大変なリアリティーで感じられる。

 

【感想・考察】

  「隠れ家」での生活で徐々に精神的に追い詰められ、家族や同居人に鬱憤を抱えながら、ある瞬間から自分を取り巻く自然の美しさや神に対しての感謝・畏れを示すようになったところでは深い感銘を受けた。

 アンネ自身、ジャーナリストとして後世にメッセージを残したいと述べていたが、20世紀のジャーナリストとして、アンネほど後世に影響を与えた人はいないのではないかと思われるほどの成果を残している。ヨーロッパ諸国間での長いいがみ合いが悲劇を起こした反省からEUが生まれ、世界のユダヤ人への同情からイスラエルが生まれ、人種差別への嫌悪が生まれたのだと思う。

 若くして命を失ったアンネは非常に不幸だったのだと思う一方で、世界に対しこれほどの足跡を残し得たことは感嘆せざるを得ない。次回アムステルダムに行った時は必ずアンネの隠れ家を訪れようと思った。

 

 本の内容とは直接関係がないが、この作品は iOSによる Kindle の読み上げ機能を使って読了した。漢字の読み方が安定しない(古新聞を”いにしえしんぶん”と読んだり、一日中を”ついたちじゅう”と読んだり)が、おおよそ問題はなかった。音読されることで感銘が深まった部分もあると思う。 Kindle-iOSの組み合わせで読書をしている人には読み上げ機能をおすすめしたい。

 

珍妃の井戸

【作家】

 浅田 次郎

 

【あらすじ・概要】

 蒼穹の昴のスピンオフ作品。光緒帝の側室であった珍妃が義和団の乱の際に井戸に落とされ死んだ。諸外国が中国人民に対して行なった行為を調査しに来た4カ国の調査団が珍妃殺害事件の真相を解き明かすため、関わって来た人々の話を聞いていく。その中で中国の歴史の重さ、帝国主義国家の身勝手さ、人の心の温かさや浅ましさが浮き上がってくる。

 イギリス、ドイツ、ロシア、日本の四人の貴族からなる調査団が、新聞記者、光緒帝に使えた宦官、珍妃の姉であるもう一人の側室、軍の実権を握った袁世凱、王家の人々に話を聞いて行くが、それぞれの証言が食い違い、誰を信じるべきか分からなくなる。最後には光緒帝本人の話を聞くことになるが、結局は自殺であったのか諸外国の侵略者に殺されたのか、嫉妬に狂った側室・皇后に殺されたのか、真相は最後まで判明しないが、ミステリ小説のように真相を追い求めることが本題ではない。

 

 

【感想・考察】

 前作「蒼穹の昴」の登場人物と重なり、ストーリーも前作から連続しているので順番に読まないとわかりにくいと思う。人の弱さ、浅ましさ、高貴さが滲み出る描写はさすがだと思う。

 「キリスト教は 愛を説くが、孔子は愛に言及しなかった。それは中国では愛し愛されることは、あまりにも当たり前だったからだ」と光緒帝に語らせている。キリスト教が生まれ育った地域では愛は得難いものだったのだろうか。孔子が礼を説くのは中国で礼が得難いからということはあるのかもしれない。。

 「蒼穹の昴」を読み、その世界観に惹かれた人には勧められる本。

 

キラーストレス 心と体をどう守るか

【作者】

 NHKスペシャル取材班

 青柳 由則、梅原 勇樹

 

【あらすじ・概要】

 ストレスが心と体にどのような影響を与えるか、ストレスから体を守るためになにができるのかについての本。

 ストレスによる影響で扁桃体が肥大化し、ストレスホルモンであるコルチゾールに対して過敏になり海馬が萎縮するなど、ストレスは脳に対して物理的な影響を及ぼしていることが分かってきている。

 一つ目の対策として、コーピングを推奨している。ストレスを発散できる行動のリストを作ること、自分のストレスレベルを客観的に把握して、そのストレスを解決するために適切なストレス発散行動を取ることだ。

 もう一つはマインドフルネスで、今自分が感じていること、今この場所の自分自身意識を集中させること。呼吸を整え意識を今に集中させることで、心がストレスの元に常に思いを及ばせてしまうような状況から逃れるようにする。実際に脳の萎縮が物理的に回復していることも確認されている。

 

【感想・考察】

  ストレスに対する コーピングは普通意識せずに行なっていることではあるが、ストレス解消方法をランク別・状況別にたくさん用意をすることで、ストレスの質・程度によって選択できるというのは意味があることだと思う。

 ストレスが物理的に体に影響を与えているのであれば、心を整えることで物理的に回復することもできるということだろう。

 一読の価値はある本だと思う。

 

坊ちゃん

【作者】

 夏目 漱石

 

【あらすじ・概要】

 直情的な性格の主人公が中学教師として田舎町に赴任する。

抑えの利かない生徒たちや、老獪な教頭・校長が、主人公との衝突を繰り返し、何かをすると全てが筒抜けになるような田舎町で生活していく。

 

【感想・考察】

いやらしい教頭“赤シャツ”の描写や、職場でのどろどろした人間関係など100年前の作品と思えない程生々しい。田舎町の濃密すぎる人間関係に疲弊する都会人の視点も、古さを感じない。通信・交通技術が発展し、人の生活は変化しているが、心の動き方は100年程度では変わらないのかもしれない。

勝ち続ける意志力 世界一プロ・ゲーマーの仕事術

【作者】

 梅原 大吾

 

【あらすじ・概要】

 プロゲーマー梅原大吾氏が、勝ち続けるためにしていることを述べた本。

印象的な部分は以下の点。

・「結果を出すこと」と「結果を出し続けること」は全く違う。「勝つこと」に対する執着は「勝ち続けること」の障壁になることもある。近道を行かず、粛々と努力することが大事。

・日々変化を続けること。間違った道に進むことがあっても、間違いであったことを発見できる。小さな変化でもいい。「100円で買っていたものを98円で買える店を見つけた」ことも成長だ。

・壁にぶつかって回避し、別の道を選んでもまたその壁が上をふさぐ。あらゆる方法で壁を超えることを冠がるべき。

 作者が「勝ち続ける 」ことができた理由を熱く語っている。

 

【感想・考察】

 随分昔だが、ラスト1ゲージから、春麗の百烈脚(?)を全てブロッキングで防ぎ切った場面を見た時は鳥肌が立った。衆人環視の大会で成功させるために、どれだけの練習を重ねたのだろう、どうやってプレッシャーと戦うのだろう、と思っていた。

 この本を読み、その場の「勝ち」にこだわるより「勝ち続ける」ために粛々と努力を続けていたから、どんな場面でも必要以上に気負わないということなのだと理解した。

 ゲームであっても真剣に取り組むうちに世界が開けてくるのは素晴らしいと思う。情報発信が簡単になった分、ニッチな世界でも尖っていれば十分生きていけるということなのだろう。

 ゲーム好きでなくても、得るものがある本だと思う。

 

 

30代にしておきたい17のこと

【作者】

   本田 健

 

【あらすじ・概要】

  30代は人生で全ての事ができるわけではないと気付かされる時期。20代までの何でもできる気分は失われるが、自分を分析し、自分が本当にやりたいこと・自分の得意なこと、できることを見つける必要がある。

 両親と過ごす時間は、思ったよりも短い。一人の人間として自我が確立して、反抗期の確執を超えたころには独り立ちする人が多い。30代になって自分も親になったりする時期になって、ようやく親を一人の人間として受け入れることができるが、そこから残された一緒に過ごせる時間は短かく大切にするべき。

 完ぺきで圧倒的な才能を持つ人はごくまれだが、中途半端であっても複数の可能性を持っている。それらを組み合わせることで独自の価値を出していくことを目指そう。

 といったような内容。

 

【感想・考察】

 自分に与えられた時間を逆算すると、今この時を大事に生きなければと思う。一方で自分のやりたいことの実現のためには、目の前のことを粛々とこなすことも必要だとは思う。考える契機にはなる本だった。 

 

蒼穹の昴

【作者】

 浅田 次郎

 

【あらすじ・概要】

 中国清朝の末期、西太后が列強に浸食される中国を守ろうとしていた時期の史実をベースにしたフィクション。苛烈な科挙を乗り越え状元として進士登第した文秀と、貧しい生まれから抜け出すため自らの意思で宦官となり、西太后に最も近づく大総管太監の地位まで上り詰めた春雲の二人が中心となる。

 夫と息子を毒殺し、歴代皇帝を裏から操った悪女として語れることの多い西太后だが、この話の中では国が苦境に瀕している中、無責任に政権を投げ出せず苦しむ一人の女性として描かれている。春雲と文秀は、西太后を中心とした守旧派と、日本やイギリスに影響を受け、立憲君主制を目指し、光緒帝による親政を実現しようとする変法派の争いに巻き込まれるが、それぞれの生き方を見つけ出して行く。

 

【感想・考察】

 素晴らしい作品。傑作。

 最初の方では、科挙や宦官といった中国の制度をその時代を生きた人の視点から説明している。一人の登場人物の呼称が複数あるので、ちょっと人物関係が掴みにくいところはあるかもしれないが、一人の人間でもその時の立場や相手によって多面性があるということが理解できる。

 歴史物語としても、政治ドラマとして見ても十分に読ませるし楽しめるが、何より圧倒されたのはその人物造形と人間ドラマの素晴らしさ。

 特に感銘を受けたのは、

 ・自命と引き換えに、王逸を牢から解放した聾唖の少女が、宇宙を理解した瞬間。

 ・死を覚悟した譚嗣同が、自らに愛を与えてくれた婚約者に思いを伝える場面。

 ・文秀が光緒帝に宛てた手紙の中で、自らの人に対する姿勢に失敗の原因があったことに気づき、気づかせてくれた春雲の妹の心に寄り添おうとする場面。

といったところ。深い感銘を受けた。

 中国の歴史などに若干の知識が無いと読みにくいかもしれないが、ストーリーの素晴らしさは圧巻だった。

 

 

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