毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

満願

【作者】

 米澤 穂信

 

【あらすじ・概要】

 6編の短編集。連作短編ではなく、純粋に独立した話で構成されている。

・夜警

 殉職した部下について回想するうち、「小心者」であった部下が何を思い何をしたのか思い及んで行く話。

・死人宿

 以前の恋人との復縁を願う男が、自分は以前と違うということを示そうと、元恋人が勤める温泉宿で起きた事件の解決にあたる。

・柘榴

 娘を愛する母親と中学生の姉妹の話。両親の離婚に伴う親権争いで母の通ってきた道を娘たちも通る。

・万灯

 バングラディッシュでの天然ガスプラント建設に人生をかける男が、その真剣さゆえに徐々に道を踏み外し、意外な裁きを待つ立場となる。

・関守

 都市伝説となるような怪奇譚を探すライターが、とある峠での連続死亡事故を調査する。バラバラに思えた4件の事故に繋がる背景が不気味。

・満願

  弁護士となるまで苦学を支えてくれた下宿宿の「おかみさん」の殺人事件裁判を弁護するが、「おかみさん」は旦那の訃報を聞き、控訴審への上告を拒んだ。弁護士は犯行が計画的ではなかったことを訴えていたが、服役していた間に違和感が膨らみ真相に近づいて行く。

 

【感想・考察】

 この作者の作品はどれも不気味な読後感を残す。今回の短編集では、各々の犯行を引き起こした心理的な背景が生々しく、「自分もそこに行きかねない」ような気持ちの悪さがあるからだと思う。後半でどんでん返し もあるが、心が騒つくような、気持ちの悪い方向に転ぶ。心に刻み付けるような話を連続で叩き込んでくるのはすごいと感じる。

 

 

思考の整理学

【作者】

 外山滋比古

 

【あらすじ・概要】

 創造的で自主的な思考はどのように育てることができるのか考察した本。

 知識を得て答えを出して行く学校教育は、風に乗って飛ぶ「グライダー」を養成しているが、自分のエンジンで飛ぶ「飛行機」型の思考が必要だ、という提言。

 記憶したこと、考えていることを一度寝かせ発酵させる工程が、独自の発想を生み出す。それゆえ、一晩眠り朝に考えることは意味がある。編集することも創造的な行為であり、既知の考え方を独自の視点で組み合わせることにも大きな価値がある。例えば俳句などでは、自分の思いを前面に出すよりもイメージを惹起する単語をどのように並べ編集するかに個性が出る。俳句の作者は触媒のようなものであると述べている。

 この本は1983年と30年以上前に書かれたものであるが、その時すでに「記憶」優先の教育は、記憶再生の能力では人間を凌ぐコンピュータに取って代わられる、コンピュータにできない創造的な活動に人間の価値が見出されるようになると予言している。

 覚えることは大事だが、それ以上に「上手に忘れる」ことが大事だという考え方を提示している。うまく忘れるためには、大事なことを峻別する方法や、体を動かすなど一つの思考に拘泥しないやり方も説明している。

 また、ものを読むときに動的な流れが必要で、ゆっくり読んで流れに乗れないと帰って理解しにくいこと、考えるをまとめるためには、とにかく書いてみることも友好など、多くの具体的なアドバイスがあった。

 

【感想・考察】

 よりよく考えるためには身軽でなければいけない、積極的に「忘れる」ことが重要だという考え方には衝撃を受け、共感を覚えた。知識は多いほうがいいが、知識の蓄積だけでは意味がない。そこからどのような独創的価値を見いだせるかが大事で、そのためには知識の整理が大事だと思う。

 情報の整理方法として、新聞・雑誌のスクラップや、メモの整理方法について説明していたが、そこにはさすがに古さを感じた。Evernote に放り込む方が圧倒的に便利で、検索性も高い。ただ、一度自分の手で情報を編集してから保管する手間をかけることで、アイディアの発酵に役立つこともあるとも思う。少なくとも読んだ本や感銘を受けた部分は手をかけて記録するようにしたい。

 「考えること」について考えさせられる本。

 

 

そうか、もう君はいないのか

【作者】

 城山 三郎

 

【あらすじ・概要】

 作者城山氏が、奥様と過ごした人生について記した本。学生時代の出会い、結婚、日々の生活、闘病から、最後に看取る瞬間まで、妻に対する愛情に満ちた視線と共に過ごした静かな幸せを描く。

「静かに行くものは健やかに行く、健やかに行くものは遠くまで行く」というパレートの箴言を大事にしていた。その通り、賑やかに周りの人交わって生活するよりも、家族と静かに粛々と生活することを好んでいて、地に足のついた生活を送っていたが、周恩来と会食をしたり、福田元首相や小渕元首相とも面識があったりと、非常に広い交友範囲を持っていた。

 作者自身も奥さんの死の7年後に無くなっており、それまでに書き散逸していた文章を編集者が整理して作り上げた本。終わりには娘の文章も載せられており、娘から両親への思いも綴られている。

 

【感想・考察】

 タイトルをみて、泣かせにくる系の恋愛小説なのだろうと思って読み始めたが、淡々とした、半ば作者の自叙伝的な内容だった。人生において「妖精」で「天使」な相手と共に過ごせたというのは幸せなことなのだろうと思う。

 

 

記憶の盆踊り

【作者】

 町田 康

 

【あらすじ・概要】

 度々酔って記憶をなくす主人公が、飲まない時も記憶が怪しくなり、昔別れた女性と家族と自分の仕事と、その他諸々が徐々に分からなくなり、周りの人々は誰なのか、自分がしていること、自分自身についても徐々に記憶がなくなり、混乱して行く様を描く、ごく短いストーリー。

 

【感想・考察】

 町田 康 独特の畳み掛け、ドライブをかけていくような文章が、記憶を失い徐々に混乱するさまを生々しい躍動感で表現されている。つい数秒前まで自分が依って立っていた場所が失われ、寄る辺ない状況になって行く心細さと恐ろしさが伝わってくる。

 認知症というのはこのような感覚なのだろうか。特に感情の豊かで肉体的にエネルギーがある時期に認知機能が落ちて行ことを考えると空恐ろしい気分になった。

 20分もあれば読めてしまう短編だが、読後に心が動かされた本だった。

 

 

適当論

【作者】

 高田 純次

 

【あらすじ・概要】

 前半は精神科の和田秀樹との対談を通じ、高田純次がなぜ憧れられる存在なのか、分析をしている。「他人に対する関心」が強すぎると統合失調の傾向があるし、「自分に対する関心」が強すぎると鬱の傾向が出る。高田純次は両方のスコアが同じで非常にバランスが良いが、どちらも強く出ていて、ある部分には徹底的にこだわる姿勢が見られる。バランスがよく嫌味にならないが、強いこだわりもあり平凡に落ちることはない。

 この人の半生をみても、妻子を抱えながら演劇のためにサラリーマンを辞め、死ぬほど働いて家族を守ったエピソードなど、自分のやりたいことに対しては徹底的にまっすぐな生き方を通している。

 

【感想・考察】

 高田純次の捉えどころのない適当さには憧れる。不真面目に生きているわけではないと思うし、常に努力と苦労をしているのだろうが、そういった部分を見せずに飄々としたキャラを見せ、毒を吐いても決して嫌味にしない。精神的な余裕と頭のキレが支えているのがよく分かり、近づきたいという思いを抱く。

 

 

片付ける 禅の作法

【作者】

 升野 俊明

 

【あらすじ・概要】

 禅僧であり、禅の庭園デザーナーである作者が、片付け・掃除を中心に禅の思想を述べた本。

 物は必要なだけ、足るを知ることが幸せにつながること。片付け・掃除をすることで心を磨くことであり、自分を大事にすることだという。掃除を習慣とするためには、最初から完璧を目指すのではなく、1日に5分間でも手をつけて、習慣になるまで続けることが必要。物を減らしシンプルな状態になって、執着やこだわりを無くした時に本当の自分を取り戻すことができる。禅の修行僧は雲水というが、これは「行雲流水」が語源で、流れる雲のように何も持たず、何ものにも捉われずに生きる道を追求することからきている。

 

【感想・考察】

 書いてある内容は特別なことは何もないが、この作者の文章は凛としていて読むだけで背筋が伸びる。きちんと真面目にまっすぐに生きている人の文章だと感じる。読むことで「きちんと生きよう」という思いが心の底から湧いてくるような本。

 

武器としての書く技術

【作者】

 イケダ ハヤト

 

【あらすじ・概要】

 ブログライターの イケダ ハヤト氏が、ブログに書くのに適した文章術から、マネタイズの方法、書くこと自体のメリットを主張している本。

 文章の書き方については、以下のようなポイントをあげている。

 ・ブログの文章はSreet Liveのようなもの、目立たなければ気付かれもしない。

 ・文章は短く、文も短く。

 ・毒を含む文であっても本音で。

 ・まず結論から書き、主張を明確にする。

 ・〜と思う、〜と考える、などの婉曲表現は腰が引けている。断定表現で。

 ・ネットの閲覧者母数は膨大、ニッチな分野の方がアクセスを稼げる。

 ・読者にどういう価値を与えらるかを意識する。

 ・見出しをつけたり、太字で強調をするなど、一見しての見やすさを考える。

 ・読者は、忙しく、飽きっぽく、批判的。ストレートな短い表現が望ましい。

 ・キャッチーなタイトルは有効

  数字をつける、コンプレックスワードや権威を使う

  (例)朝にするべき5つの習慣、一生モテない人の残念な理由、ハーバード流学習術 などなど

 ・一つのエントリーには一つのテーマだけにする。

 ・句点は極力省き、勢いを殺さない。長くなるときは文を分ける。

 ・改行を多めにして、文字が詰まらないように。  

 ・簡単な言葉で伝える方が難しい。難しい言葉でひけらかすのは愚か。

 

また、アクセスを増やす方法として、影響力のある人をインフルエンサーを使うことや、記事のストックを増やし、検索エンジン経由での流入を進めることなど、極めて具体的で実際的な内容。

 

【感想・考察】

 驚くほど有意義な本。文章の書き方もネットでのアクセスの稼ぎ方も、マネタイズについても、全てが実際的なアドバイスで、非常に役に立つ。著者は知らなかったが素晴らしい内容だった。

 ブログなどでアクセスを増やしたいと思っている人も、人に伝わる文章を書くことを目指している人も、必読の本だと思う。

 

 

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