毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

盤上の夜

【作者】

 宮内 悠介

 

【あらすじ・概要】

 囲碁、チェッカー、麻雀、将棋、チャトランガ(古代チェス)といった盤上ゲームに魂ごと持って行かれた人物たちの短編集。独立した短編ではあるが、ジャーナリストの視点から各話の主人公たちを一貫した視点から描いている。

「盤上の夜」では、理不尽に四肢を奪われ囲碁を通して世界感覚を掴んでいる由宇と、彼女を支える棋士、相田の話。由宇は感覚を表現する言語を探し、かつて誰も経験したことのない、碁盤や碁石を通した感覚を表現するために言語世界を超越してしまう。相田は棋士とは根源的に孤独であると感じながら、由宇と支え合うことを選ぶ。

「人間の王」では、40年間無敗を誇ったチェッカーの王者が、コンピュータアルゴリズムの対戦する様を描く。チェスよりは簡単なルールであるチェッカーは既に「完全解」が解かれていて、コンピュータは間違えなければ確実に引き分ける。一流プレーヤとプログラムの戦いではなく、プログラムの作成者と、一流プレーヤをプログラムした神との戦いであり、さらなる強者と戦いたいという強者の渇望は、神のプログラムの先を見たいという思いなのか。

「清められた卓」は麻雀の話。新興宗教教祖のシャーマンである女性が、プロの雀士、確率・統計についてサヴァン症候群的な天才的能力を持つ少年、シャーマンの治療にあたり逆転移で恋愛感情を持った医師と対局する。対局自体は爆牌的な超常的な読みで面白いが、シャーマンの目指していたことが最後に明かされ驚かされる。

「象を飛ばした王子」は古代インドに実在した王子の話。ガウタマ・シッダールタ(釈迦)の息子である羅睺羅(ラーフラ)が、戦争の最中、将棋やチェスの原型となるゲームを夢想する。誰にも理解されないまま、構想を温め続けるが、ある日国に戻った父であるシッダールタが、万民の救済を考え自分とは違う地平にいることを知り、帰依していく。

「千年の虚空」は、政治家として「量子歴史学」を打ち立てた兄と、将棋の中に歴史をみた弟と、二人を支え、操り、導いた女性三人の話。量子歴史学は全ての歴史資料の信頼性をフラットに捉え、相互関係から信頼性評価をした上で、「真実の歴史」を浮かび上がらせようとするが、実際には「複数の真実が同時に存在する」状態に帰結し、歴史的真実が意味を失った。弟は将棋の駒と会話し、数千年の歴史を見出していた。どちらも戦いと暴力をこの世から駆逐したいという思いながら、逆のアプローチをとっている。

「原爆の局」最終話で再び第一話の由宇と相田の話に戻る。由宇と対局したいという井上と共に、ジャーナリストが二人の旅路を追っていく話。広島に原爆が投下された日に行われていた囲碁の棋譜を追いながら、ゲームとは何か、人間の知性とは何か、抽象と具体とは何か、について畳み掛けるようなメーッセージが投げかけられる。

 

【感想・考察】

 昨日、羽生善治の将棋の本を読んだばかりで、ちょうど棋士のクレージーさに惹かれていたところで、興味深く読むことができた。チェッカーは完全解析され、チェスの完全解も間も無く出るだろう。将棋が完全に解析されるのもそう遠い未来のことではないと思われる。人間の完全解が出るとしたら、どこに帰着するのだろうか。人間がルールを考えたゲームだが、その限界は人間の思考能力を超えている。人は人を超えるものを作り出せる。

 読んでいて、久しぶりに麻雀をしたくなった。

 

 

決断力

【作者】

 羽生 善治

 

【あらすじ・概要】

  当時圧倒的な強さで棋界を騒がせた羽生善治氏の本。

 才能とは、一瞬のひらめきではなく、情熱を持ち続けることにあると述べている。若さには勢いがあるが、長きに渡り時に挫折感を抱くことがあっても、諦めずに一つのことを続けるのが最大の才能であるという。

 長い人生で徐々に経験を重ねることで、知識は増えていく。ただ本で読みネットで調べるだけではなく、自分で実際に使い理解をしていくことで本当に使える知恵となっていく。また若い時には勢いがあり、経験を重ねることでかえって失われてしまうこともある。経験にはプラス面もマイナス面もあり、マイナス面を出さないようコントロールしていくことも大事だとしている。

 直感は7割が正しい、不必要なことを捨てることが大事など、天才と言われる棋士の考え方が垣間見えた。

 

【感想・考察】

  今から10年ほど前の本で、棋譜の記録などにコンピュータが使われ始め、将棋の指し方が変わり始めた様子がよく分かる。現在ではコンピュータは棋譜の記録・検索に止まらず、アルゴリズムで人間の棋士と勝負をするレベル、それもトップレベルの棋士も超えるレベルに達している。この10年間の技術の進展を強く感じる内容だった。

 

 

難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!

【作者】

 山本 元、大橋 弘

 

【あらすじ・概要】

 金融知識をほとんど持たない青年が、専門家の意見を聞くというスタイルで

初心者に適した投資方法を説明する本。

 紹介される内容はごくシンプルで、推奨されているのは以下の商品だけ。

  ・個人向け国債変動10年型

  ・投資信託

   ①上場インデックスファンドTOPIX

   ②ニッセイ外国株式インデックスファンド

 

 基本原則として、どんな優秀なディーラでも勝率に大差はなく、それであればインデクス連動の単純なロジックで、手数料が安いものを選ぶのがいいという考え方を射ている。上がる下がるは運だが、手数料や税金などのマイナスはやり方を知れば確実に学べる。銀行や証券会社が勧めてくるのは利幅の大きいものなので、引っ張られてはいけない。

そういう観点から税制優遇のあるNISAやまずは、低いリスクで手間のかからない投資を行い、自分が必要としている目標額を逆算して貯めるようにすればいいと推奨している。

 

【感想・考察】

 非常にシンプルで、私のように何の知識もないがとりあえず投資を始めてみようという人にはとっつきやすい。楽天証券の関係者が著者となっているだけあって、手数料の安さを推してくる部分はポジショントークかという気もするが、低リスクのものを見つける助けにはなる。ちょうど証券口座を開いたばかりの自分には最適の指南書だった。

 

 

読書脳 ぼくの深読み300冊の記録

【作者】

 立花 隆

 

【あらすじ・概要】

  冒頭は東大図書館副館長の石田氏との対談で、コンテンツのデジタル化の急速な進展で「本を読む」ことの位置付けが変わってきていることを語っている。

 立花氏はヘッドラインを見ただけで理解した気になるなど、「浅い読み方」になっていることを懸念している。

 石田氏は、その考えには同意する一方で、読書記録を公開共有化するソーシャルリーディングなど、デジタルとアナログのハイブリッドでできることを追求してみたいという構想も語っている。

 

 読書記録の部分は、政治・歴史・宇宙科学・物理学・量子力学・美術などなど、幅広い分野の本を取り上げている。小説などのフィクション系は完全に排している。

 特に興味を惹かれたのは以下の作品;

 ・インテリジェント・デザイン ID理論

  ダーウィンの進化論には納得できず、生命の発生・進化には何らかの知性が働いているはずという理論。宇宙の法則を神と見る考え方には共鳴できる。読んで見たい。

 ・911は謀略か「21世紀の真珠湾攻撃」とブッシュ政権

  911が陰謀によるものとは思わないが、全ての事実が公開されているわけでもなさそうだと思っている。その後の歴史に影響を与えた出来事で、その意味を知りたいと思う。

 ・特捜検察vs.金融権力

  日本内部での権力構造の本質を見てみたい。

 ・137 物理学者パウリの錬金術・数秘術・ユング心理学を巡る生涯

  微細構造定数というのは何なのか興味があるのに加え、パウリという人物自体にも関心が出てきた。

 

【感想・考察】

 幅広い範囲の本を選んでいるが、脳科学などには特に強い興味があるようだ。それだけでは内容がほとんど分からず、読みたい気持ちを惹起させる為の書評という感じだが、紹介される本は安くて数千円から十万円以上のものも多く、簡単には入手できなそう。それでも気になった数冊は読んでみようと思う。

 

 

幻影の手術室 天久鷹央の事件カルテ

【作者】

  知念実希人

 

【あらすじ・概要】

 天久鷹央シリーズの最新刊。

 手術終了後、全身麻酔から覚醒しつつあった患者と麻酔医の二人しかいない部屋で、麻酔医がメスで殺され、患者が容疑者とされた。その患者は主人公である鷹央、小鳥遊と同じ病院に勤務する研修医の鴻ノ池舞で、主人公たちは舞にかかった容疑を晴らすべく、調査を進める。

よ 手術室の監視カメラ画像に残された、被害者が誰かと争うような動きや、その病院で数ヶ月前から囁かれていた、透明人間の噂からオカルト気味な味付けがされているが、いつものように医療知識が鍵となるミステリだった。

 

【感想・概要】

 いつもながら、ミステリとしては若干強引だが、各キャラクタの魅力が引き立っていた。鷹央は他人の心を忖度することができないアスペルガーとして描かれているが、事実は事実として冷徹に向かい合いながらも、仲間を助けたいという思いの強さが暖かさを感じさせる。死神シリーズを読んでからこの作者の人間の描き方に一貫性を感じ、快さを感じるようになってきた。

 

 

 

ミリオネア・マインド 大金持ちになれる人

【作者】

 ハーブ・エッカー

 

【あらすじ・概要】

  お金に対する認識を、正しい「お金の設計図」に書き換え、金持ちの思考回路を手に入れることで、正しいお金持ちを目指そうという話。

 育ってきた環境や聞いてきた言葉、トラウマ的体験などから、無意識のうちにお金に対して否定的な態度をとっている人は、無意識のうちにお金を稼がず、貯められない状況になっている。思考から感情が生まれ、感情から行動が生まれ、行動から結果が生まれるからには、まず思考を正しくプログラミングすることが大事。

 

 お金持ちの思考回路として17個のミリオネア・マインドを紹介している。

(1) 金持ちになれる人は「人生は自分で切り拓く」と考える

  他責ではダメだということ。

(2) 金持ちになれる人は「成功と富」を目指す

  暮らしに困らないレベルを目指しているなら、そこまでしか行けない。

(3) 金持ちになれる人は「絶対に金持ちになる」と考える

  お金に対する一貫した態度を持ち、覚悟を持って取り組む

(4) 金持ちになれる人は「大きく考える」

  自分はもっと大きく世界に貢献できるはずという思いが力を与える

(5) 金持ちになれる人は「チャンス」に注目する

  障害はあるが、勇気をもって計算されたリスクを取りに行くべき

(6) 金持ちになれる人は「成功者を賞賛する」

  人を妬む気持ちは百があって一利なし、金持ちは強欲とは限らない

(7) 金持ちになれる人は「成功した人」と付き合う

  成功した人と付き合うのは気後れするが、成功者には人格者が多い

(8) 金持ちになれる人は、セールスに「積極的」である

  自分自身、自分が売り込むものに自信があれば尻込みする必要はない

(9) 金持ちになれる人は、自分が抱える問題より「器が大きい」

  問題の大きさは、それを抱えている人との相対的な関係

(10) 金持ちになれる人は、富を受け取るのがうまい

  卑屈になるのは死んだ後でいい、お金はその人の本来の性格を伸ばすもの

(11) 金持ちになれる人は「成果」に応じて報酬を受け取る

  時間給が安定するわけではないし限度がある、独立を推奨している

(12) 金持ちになれる人は「両方とも手に入れたい」と思う

  勝手に諦めて可能性を狭める必要はない、お金と幸福の両方を手にできる

(13) 金持ちにれる人は「総資産」に注目する

  勤労収入だけではなく、不労所得も含め貯金を蓄え、投資をして総資産を増やすことで、金持ちになれる。その過程では節約も大事。

(14) 金持ちになれる人は、お金を「上手に管理する」

  少額のお金でもきっちりと管理することで、お金に対するコントロールを得る

(15) 金持ちになれる人は「お金をフル活用する」

  お金がお金を育ててくれる。経済的自由は不労所得が必要経費を上回った時に得られる

(16) 金持ちになれる人は、恐怖に負けず「行動する」

  快適なゾーンに安住せずに、不快なゾーンをかいくぐるから成長できる、自分が自分の物語に意味を与える。

(17) 金持ちになれる人は「なんでも学ぼう」と思う

 教育は高くつくが、無知はもっと高くつく、知識は力だ。

 

また、最後に訳者の本田健氏がボリュームのある解説を記している。金持ちになれる人は、自分にも周りにも与えるのが好きで、お金に縁のない人は、自分にも周りの人にもケチである、と述べている。

 

【感想・考察】

 私の周囲の人にも、お金が欲しいと願いつつ、お金は良くないものだとか、お金持ちは強欲で悪どい人間だという考えを持つ人が多いし、私自身もそういう感性を持っていた時もあった。ただ、人生で知り合った人のことを考えると、経済的に余裕のある人は、周囲に対しても余裕のある心配りができる人が多いと思える。お金があるから余裕ができるのか、余裕があるからお金が集まるのか、鶏と卵だが相関関係があることは間違いない。

 モチベーションを高める一冊だった。

 

 

 

仮想通貨とフィンテック

【作者】

 苫米地 英人

 

【あらすじ・概要】

  ビットコインなど、インフォメーションテクノロジーを活用した、ファイナンスであるフィンテックについての概説的な本だが、通貨や金融の起源や、暗号化技術の基本まで幅広く、わかりやすく説明されている。

 フィンテックを大雑把にいうと「ブロックチェーンに代表される分散的なな認証の仕組みと人工知能なども絡めたデータ処理のことであり、技術的には新しくはないものの、周辺技術(コンピュータやインターネットインフラ)の進歩によって。いろいろなことができるようになっている金融の仕組みの総称」と説明しているが、端的でわかりやすい。

 通貨の機能として、価値の尺度であり、交換の手段であり、保存の方法であるとまとめている。また金庫業社の預かり証自体が流通し始めたのが銀行の起源だという話は初めて聞いたし非常に面白い。

 電子的な仮想世界では限界費用が極限まで低くなるため、現実通貨との交換を認めてしまうと、フェアではなくなるとの懸念から自ら考案した電子通貨では現実の通貨との交換を認めなかった話も極めて興味深い。

 暗号化についても、共通鍵から公開鍵と秘密鍵の組み合わせに移行した経緯がわかりやすく述べられていた。

 ビットコインの技術も新しくはないが、取引の正当性の認証をマイニングという形でユーザに競争させ処理を分散した点は画期的だったと思われる。

 

【感想・考察】

 作者の苫米地英人という人物に興味が湧いた。以前読んだ本では自己啓発的な内容で、そういう分野の作者だと思っていたが、この本を読む限りICTに関する造詣も極めて深く、分かりやすく説明する技術も備えている。

 フィンテックの範囲を超えた本として興味深く読めた。短いが内容の詰まった本。

 

 

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